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2012年12月16日 (日)

288 『記憶がなくなるまで飲んでも、なぜ家にたどり着けるのか?』 川島隆太・泰羅雅登 初版2007(文庫化2010)

オモシロまじめに
酒と脳の関係を通じて人の脳について考える

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wine概要

「酒と脳のアブナイ関係」を“飲めない”川島隆太と“底なし”泰羅雅登の二人の脳科学者がオモシロまじめに大討論。脳にとって、酒は百薬の長なのか? それとも…。人類が長~く友としてきた酒と脳の関係を通じて、人の脳について考える。

wine読むきっかけ&目的&感想

昨年からわたしは外でも家でもほとんどお酒を飲まなくなったけど、過去には恥ずかしながら記憶がなくなるまで飲んで家にたどりついた経験が1回あるので、まず題名に興味を持った。あと、脳トレで有名な川島教授のお酒と脳に関する本だというのも、面白そうだと思った。

さくら好み ★★★★☆

wine覚書

「酔って記憶がなくなる」

酔って記憶がなくなるとよく言いますが、本当にそうなのでしょうか?

記憶にはいくつかの種類があります。代表的なものは短期記憶と長期記憶です。短期記憶が作られて、それが繰り返し使われたり、自分で重要と思えたものは長期記憶として残ります。

短期記憶とはとりあえずの記憶、つまり一時的な記憶で、お酒に酔っていても、相手の話を聞き、そのキーワードを記憶して、それに関する話を続ける、といったことは可能です。ただ、そうした一連のことをあとで思い出せない。この時の短期記憶は、長期記憶にならないままに、消えてしまったのです。脳の機能が低下しているため、記憶を定着させるだけの手順が踏めず、消えていってしまうのです。

深く酔って、記憶が作られなくなるのは海馬が麻痺しているからですが、大量の酒を習慣にしている人に起こる病気とは違い、酔いが醒めれば元に戻ります。

ところで最近、実際に脳で行われていることを観察していると、これまで使ってきた「長期記憶」「短期記憶」といった分類そのものが、本当に記憶のメカニズムを表しているのかどうか、やや疑問に思えてくるようになりました。脳の機能が解明されるにつれて、記憶に関する新しい考えがこれから出てくる可能性があります。

「脳ナビ」

人間の脳には非常に優れた機能があります。ある程度アルコールを飲んで、脳の機能が低下していても、その機能がちゃんと発揮されることがあります。その一つが「脳ナビ」です。

人間の脳の中に、地図があり、酔っていて記憶を作ることができない状態なのに、これまでの経験としての帰宅経路を読み出して、それに合わせて酔った自分を家まで連れて行ってくれるのです。

研究の結果「ナビゲーションンユーロン」という神経細胞が特定されました。通い慣れた道の風景、つまり視覚情報に対応して「この信号を右へ」といった指示を出す神経細胞があるのです。これさえあれば、記憶が作れないほど酔っていても、「いつもの道」である限り、なんとか家にたどり着けます。ただし、記憶が作れないので、「どうやって帰ったのか」は覚えていません。

「脳」に染みるお酒

心は脳の中にあると考えていいのではないか、と脳を研究する多くの人は思っています。心は脳の活動の一つなのではないか。その証拠をつかまえていくのが私たち、脳を研究する者の仕事なのでしょう。

こうした研究では、すでに「自分は脳の中のどこにいるのか」を明らかにしようとしています。そこでわかってきたのは、自分自身を認識している脳の部分は、自分の家族や友人たちを認識している部分とはまったく違う場所にあることです。自分を認識する特別な部分が脳にはあると言ってもいいでしょう。しかも一か所ではなく、何か所かの活動によって支えられているらしいのです。

進化の過程から見て脳の最も古い部位の一つである辺縁系が、その活動の一端を担っています。そして側頭葉、前頭前野の活動を含めて「自分は自分だ」と理解しているのではないかと考えられているわけです。

「自分」は脳の中に住んでいることを示す傍証は増えています。これは、脳のネットワークの活動が低下していくと、自分が脳という器から消えてなくなっていく可能性をも示しています。脳の活動が止まれば、自分はどこにもいなくなるでしょう。

アルコールが脳に作用しているということは、アルコールは人の心に作用していると言えますから、確かに「心に染みる」と言ってもいいわけです。自分の意思でアルコールを摂取して、自分自身を変えようとしている、とも言えます。自分を変えてみたい、という気持ちがアルコールを求めているのかもしれませんね。

とはいえ、その人の心は一つだけです。「変身したい」と思っても、それもまた自分の一部です。または自分で新たに作り出した自分です。前頭前野による抑制が外れてくると、そうした願望のある人は、いつもと違う自分になれるのかもしれません。でも、それもまた自分なのです。

お酒に強い、弱いを決めるALDH

お酒として人が飲んだアルコール(エタノール)は、体内にあるADH(アルコール脱水素酵素)によって、アセトアルデヒドに分解されるのです。ADHには、不活性型と活性型があります。不活性型はゆっくりアセトアルデヒドを作り、活性型はアセトアルデヒドをスピーディーに変換していきます。さらにアセトアルデヒドは、ALDH(アセトアルデヒド脱水素酵素)で水と酢酸に分解されます。

以前は、お酒の強さはADHを持っているか、いないかで決まると言われていましたが、それは間違いということがわかっています。お酒に強い、弱いはアセトアルデヒドを分解するALDHによって決まります。

民族差

ADHの遺伝子型を調べた結果、民族差があることも知られています。日本人は約85%が活性型で、欧米人は10%の割合で活性型が見られます。つまり日本人の多くは、簡単にアルコールがアセトアルデヒドに変わり、アセトアルデヒドによる反応(顔が赤くなるなど)が出やすいわけです。

ALDHにもいくつかの種類があります。その中のALDH2には、活性型(N)と不活性型(D)があり、両親からいずれか一つずつを受け継ぎます。ですから、人にはNN型、ND型、DD型の三つのパターンがあります。NN型はアセトアルデヒドの分解が速く、たくさん飲めるタイプです。DD型はその逆で、アルコールを飲むとアセトアルデヒドの影響が強く出て、体質的にまったく受けつけません。ND型は、まあまあ飲めるけど強くないタイプです。先ほどのADHとの組合せでいうと、活性型のADH・NN型のALDH2は一番お酒に強いということになります。欧米、中東、アフリカでは、ほとんどの人がNN型ですが、日本人では56%がNN型、40%がND型、4%がDD型です。

NN型は、アセトアルデヒドがすぐに分解され、アセトアルデヒドによる症状が出にくい。もちろん、飲み過ぎれば分解が間に合わなくなってきて、症状が出てくるようになります。

酒酔い防止法

酒酔い防止法(昭和36年7月1日施行)というものがあり、「すべて国民は、飲酒を強要する等の悪習を排除し、飲酒についての節度を保つように努めなければならない」とされています。酩酊者は、拘留または科料ということもあります。かつては「トラ箱」という言葉もよく耳にしました。酔っ払いを警察署などに留め置く措置です。酒飲みを「虎」に喩えたことから、こう呼ばれたのです。

この法律での酩酊者とは「アルコールの影響により正常な行為ができない恐れのある状態にある者」のことです。

二日酔いの特効薬は無い

残念ながら、二日酔いの特効薬はありません。アセトアルデヒドをまず分解して無害な酢酸にし、最終的に体外に排出すれば、快方に向かうでしょう。

それには肝臓に大きな負担がかかりますし、同時に代謝のためにたくさんの水分が消費され、脱水症状も出ているはずですから水も必要です。できれば、飲んだ日の夜に水分を取っておくのがいいでしょう。

頭痛とは

二日酔いでつらいのは、頭痛です。お酒を飲まなくても、頭痛に悩まされている人は多いと思います。どうして頭が痛くなるのでしょうか。

この痛みは、脳が痛いわけではないのです。脳そのものは、痛みを感じません。痛いのは血管なのです。それも脳の血管ではなく、頭の皮膚の血管であることが多いのです。よく起こる頭痛は「緊張型」です。首や肩の筋肉が緊張しているのです。精神的なストレスや同じ姿勢を続けていると起こりやすくなります。首や肩の筋肉を強化したり、適度な運動をすることで和らげることができます。

さらに激痛である「偏頭痛」「群発頭痛」は、頭皮の血管の拡張、炎症で起こります。偏頭痛は女性に多いとされ、遺伝的傾向も知られています。

二日酔いの頭痛にはアセトアルデヒドが関係していることはわかっていても、その他の原因もあるようで詳しいことはよくわかっていません。例えば、アルコールによって血管が拡張すると言われていますから、頭皮の血管が拡張して頭痛になるのかもしれません。あるいは脱水症状によって脳の中の水分が減少し、脳が縮むとか、または脱水症状によってむしろ腫れるなどして血管を刺激しているのかもしれません。

脱水症状は、暑い時やスポーツをしている時などにも起こります。この症状である喉の渇き、めまい、吐き気、頭痛などは二日酔いとも共通しています。

酒宴の後半では水をあわせて飲んでおく

飲酒の習慣は、脳を萎縮させますが、一時的にも飲酒により脳が萎縮します。アルコールの浸透圧によって脳の中の細胞に含まれている水分が失われ、脱水症状になるからです。二日酔いの割れるような頭痛は、この脱水症状による影響もあると考えられます。ただし脱水症状がなくなれば、元に戻ります。

ということで、お酒を飲んだ日は、寝る前にできるだけ水分を補給しておくことです。もっと早く、酒宴の後半では水をあわせて飲んでおく、というのがいいかもしれません。もっとも、そこまで用意周到な人は、それほど酔っていないともいえます。

しかし、すべての二日酔いに効くわけではありません。

飲み過ぎそのものに注意しなければならないですが、ビタミン不足にも注意してください。コルサコフ症候群もビタミンB1の不足によるものです。アルコール性脳症などとも言われ、いわゆる健忘症になります。お酒ばかり飲んで食べないでいると、栄養のバランスが崩れてこうした症状が出ることもあるのです。

ADH型とALDH2型の組合せ別症状

前にも書きましたが、お酒の強い弱いはALDH2の型で決まりますが、ADHと組み合わせると次のようにも言えます。

アルコールをすぐに代謝し、あまり酔うことなく飲める人は、ADH、ALDH2ともに活性が強い人です。日本人では珍しいのですが、こういう人と同じペースで飲むのはやめておいたほうがいいでしょう。

ほろ酔い気分が長く続く人は、ADHの活性が弱いか、ALDH2活性が強い人。血中にアルコールが多く残りますが、アセトアルデヒドの分解はいいので、あまり苦痛を感じません。ですから、どんどん飲んでしまい、飲酒量が増えて肝臓を傷めやすいから注意したほうがよさそうです。

飲み始めは気持ちよく、つい飲み過ぎてしまう。そして、ひどい二日酔いになりやすい人は、ADH活性、ALDH2活性の両方が弱いのでしょうね。肝臓をとても傷めるタイプですから、とにかく飲み過ぎないことです。

飲むと吐き気などがして、いわゆるお酒が苦手な人は、ADHの活性が強く、ALDH2活性が弱い人です。アルコールはアセトアルデヒドにすぐに分解され、アセトアルデヒドばかりが蓄積されていってしむので、お酒はあまり飲んではいけません。というより、そういう人はほとんど飲まないでしょう。

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コメント

自分と思っている自分と自分が感知ししていない自分とがあるということは果たして自分とは真に実在しているのだろうか?という疑問がなりたつ。そもそも自分とは何なのかという意味で。

投稿: nono1 | 2012年12月22日 (土) 20時07分

ちょっとずれるけど、、、

人間は科学技術の発達によってパワーアップしてきたよね。文明の利器を使えさえすれば誰でもマッチョになれるし、不特定多数に考えを披露することもできる。昔の人に比べて自己拡大している、ともいえる。身体の器が自己の境界を形作っているとは言えない気がする。

反面、脳さえ生きていれば自分を自分と認識できるのか、脳が誕生した時点で心がうまれるのか、といったような自己認識の中枢はナンなのか、、、というのも不思議に思う。

自分って何なのでしょうね。 ^^

投稿: さくらスイッチ | 2012年12月25日 (火) 22時33分

自分って何、すごーーく難しいなぁ(^_^??
でも、何とかつかみたい命題ではある!

投稿: nono1 | 2012年12月27日 (木) 18時18分

そうだよね~ ^^

投稿: さくらスイッチ | 2012年12月28日 (金) 00時45分

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