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2012年11月 4日 (日)

287 『三国志 演義から正史、そして史実へ』 渡邉義浩 初版2011年

『演義』を入り口に、「正史」の記述を検討
そして、史実の世界へと誘う

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sagittarius概要

日本人をも魅了し続ける、三国志。しかし、『三国志演義』や、それを下敷きにした小説・ゲームの世界は「虚構」に満ちている。また、「正史」と呼ばれる歴史書の『三国志』も書き手の偏向がつきまとう。本書は、一般に親しまれている『演義』を入り口に、「正史」の記述を検討。そして、史実の世界へと誘う。暴君董卓の意外な美点、曹操が文学に託したもの、劉備と諸葛亮の葛藤―あなたの知らない三国志がここにある。

sagittarius読むきっかけ&目的&感想

中国時代劇『三国志 Three Kingdoms』全95話をGyaO!で見ていくうちに、どのくらいが虚構でどのくらいが史実なのかが気になるようになった(私は映画『レッドクリフ』でしか三国志作品に触れていなかった)。わたしがドラマを見ていた時、たまたま知人が吉川栄治の歴史小説『三国志』を読んでいたのでそれとなく聞いてみたけど、お互いに「どうなんだろうね~」「そもそも1800年近く前の事だから どのくらいの事が正確に残っているか、、、」という感じで終わってしまった。

で、このドラマ三国志で日本語字幕を監修した渡邉義浩さんの本を検索してみたら、面白そうな本書があったので読んでみた。

さくら好み ★★★★

sagittarius備忘録

神となった英雄 関羽 ~塩地を守る財神

後世の人間より神格化され関帝(関聖帝君・関帝聖君)となり、47人目の神とされた。信義に厚い事などから、現在では商売の神として世界中の中華街で祭られている。民衆の人気も高く、各地の中華街には関帝廟が建立されており、日本においては横浜中華街の関帝廟と神戸南京町の関帝廟が著名である。 by wiki 関羽

関羽の出身県である解県は、中国最大の塩の産地であった。「敵に塩を贈る」という言葉があるが、日本は海に囲まれた島国である。それでも武田信玄は、塩不足に苦しんだのであるから、塩の入手の難しさが分かる。また、salary(給与)の語源はラテン語のsal(塩)である。ローマは、給与を塩で支給していたのである。それほどまでに、塩は貴重であった。大陸国家の中国では、塩の採れる場所は限定される。これを利用した塩の専売は、前漢の武帝期より始まる。

宋代の専売方法は、塩の生産・運搬・販売を国家が行う榷塩法から、塩を払い下げる時に徴税し、後は商人に任せる通商法へと移行した。しかも、北方民族との戦いが絶えなかった宋は、塩の専売を国境での軍需品納入に利用する。商人は、銀や銅銭、兵糧や馬草を京師や国境に納入して、塩引と呼ばれる販売許可証を受領し、これを生産地に持参して塩を受け取って販売した。

最大の塩生産地である解県の塩商として発展してきた山西商人は、その担い手となった。宋の財政の八割は軍事費に当てられ、税収入の五割を塩税が占めた。それを一手に取り扱う山西商人は、莫大な財を築きあげた。その守護神であったからこそ、宋は、戦いに際して関羽に祈りを捧げた。

関羽信仰は、商人と国家権力とが結合するための手段として発展したのである。

滅びの美学と「漢」の規制力

三国はいずれも勝者ではない。曹魏も蜀漢も孫呉も天下を統一することはなかった。統一した西晋もまた匈奴に敗れた。「三国志」を「滅びの美学」に描く『演義』は、「分かれること久しければ必ず合し、合すること久しければ必ず分かれる」との循環論的な歴史観を冒頭に掲げ、その悲劇を美学に昇華している。その滅びの美学を日本人は愛した。判官贔屓のお国柄がよく現れているといえよう。

中国史全体の中に三国志を位置付けてみると、「漢」の規制力の強さと曹魏の果断さに改めて気がつく。蜀漢が「漢」の正統を継承する国家であっただけではない。かつて孫呉も、その正統性に「漢室匡輔(かんしつきょうほ)」を掲げていた。また、名士の基盤である文化的価値の中核にも、「漢」を正統とする儒教が置かれていた。

その漢を乗り越えた曹魏は、果断であった。決断力に長ける曹操ですら、漢の正統性の前ではたじろぎ、自らは革命を行い得なかった。しかし、曹操は、息子の曹丕が魏を建国し得る正統性と国力を着実に準備していった。なかでも、漢と密接に結びついた儒教の価値を相対化するため、「文学」という新たな文化的価値を宣揚した先見性は、高く評価されよう。また、隋唐統一帝国の基本となった均田制・租庸調制という土地・税制度も、曹操のそれを継承したものである。分裂に向かう中国を押しとどめたもの、それが曹操なのである。

しかし、中国が自己の典範とすべき伝統として歴史を振り返ったとき、その中心に置かれるものは、「漢」であった。こののちも儒教が、中国の正統思想に君臨を続けたためである。したがって、中国の古典古代である「漢」を守ろうとした劉備や諸葛亮は、高く評価され続けた。それでも「漢」は滅び、「漢」を古典と鑑みる新たな国家により中国は統一される。『演義』の循環論的な歴史観は、「漢」による中国統一の願いを今日に伝えるのである。

目次

はじめに

第一章 演義と正史 それぞれの限界

  1. 「三絶」曹操・関羽・諸葛亮
  2. 『三国志演義』の虚構
  3. 蜀漢正統論
  4. 『三国志』の偏向

第二章 二袁の真実 「漢」の重みと簒奪

  1. 黄巾の乱
  2. 暴君董卓
  3. 袁術の僭称
  4. 袁紹の限界

第三章 「奸絶」曹操 変革者の実像

  1. 時代を切り開く
  2. 三つの基盤
  3. 赤壁の戦い
  4. 文学による対抗

第四章 悲劇の国、孫呉 道化とされた男たち

  1. 孫氏三代
  2. 美周郎
  3. 魯粛の天下三分の計
  4. 陸氏の無念

第五章 「義絶」関羽 神となった英雄

  1. 桃園結義
  2. 漢に降るも曹に降らず
  3. 義もて曹操を釈つ
  4. 武神から財神へ

第六章 「智絶」諸葛亮 劉備とのせめぎあい

  1. 三顧の礼
  2. 借東風
  3. 遺弧を託す
  4. 八卦の陣

第七章 分かれれば必ず合す 三国志の終焉

  1. 秋風五丈原
  2. 司馬氏の台頭
  3. 詩は志を言う
  4. 天下 一に帰す

あとがき

sagittarius色々

中国時代劇『三国志 Three Kingdoms』オープニングとエンディング

*我に還さん太平なる天下を YouTube 

わき立つ風雲の下 千変万化あり
つがえし矢は かならずや射ん
文武に勝れる英傑 天下を三分す
天子を軽んじ 覇者への野心 
不遇を嘆き 戦に赴く馬上の人        
天下に君臨するは 絵空事にあらず
男たちは闘い 戦場に火花を散らす
百年の人生も 一瞬の輝き
塞北の秋風に狩場の馬          
江南の春雨に杏の花          
千古の山河は詩われ画かれる
我に還さん太平なる天下を

*天地の間を往来する英雄 YouTube

夢から醒めても変わらぬ山河    
いにしえより戦場は幾度 季節がめぐったか    
果てなき道 あふれる情念
人生を振り返るも いまだ遂げぬ志
青梅 酒を煮て かくも語りつくす
天下の英雄とは 誰ぞ
烈火に燃ゆる舟 振り返るのだ
江東の覇者もあなどれぬ
空ならず 有ならず
永遠なる英雄の魂
去りも留まりもしない
人の世を往来し
天地と共に生きる
天地と共に生きる

*天地は果てしなく広い YouTube

天地の間は果てしなく広い
そこで大きな力がぶつかり合う  
勝っても負けても長くは続かない 
大地を流れる大河のごとく
はるか彼方へと流れ去っていく
幾万もの書物が表しているように    
何代にもわたり 興亡は繰り返される
身を立てて早く故郷に帰ろうか    
心の中の志を静かに思い起し
言葉もなく斜陽に目を向ける

未読のまま返却

本書を図書館で借りるとき、本棚の同じ列にあった本の中から興味が持てそうな本を一緒に数冊借りた。がしかし、難しくて興味が持てず挫折。

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コメント

史実と虚構、たぶん日本の忠臣蔵のように事実のコアがあってそれに人々のかくあれかしという願望が混入されていったものと言うのが近いかな?

投稿: nono1 | 2012年11月 8日 (木) 12時59分

うんうん、そうだよね。史実より虚構の部分、つまりどんな時代のどんな人々が、どうあれという願望を混入させたのかに興味がある。なかでも特に、現代のドラマ制作者のテーマが。

NHKスペシャルの「中国文明の謎 第1集」が面白かったから明日夜の第2集も見るつもり。お薦め♪

投稿: さくらスイッチ | 2012年11月10日 (土) 07時00分

お~情報ありがとう♪♪
いいね(^_^)/

投稿: nono1 | 2012年11月10日 (土) 09時31分

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