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2012年2月 5日 (日)

263 『スティーブ・ジョブズ Ⅰ、Ⅱ』 ウォルター・アイザックソン 初版2011年

見えないところもすべて美しく仕上げる
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pc原題

Steve Jobs (2011.10.24 /アメリカ)

pc概要

取材嫌いで有名なスティーブ・ジョブズが唯一全面協力した、本人公認の決定版評伝。アップル創設の経緯から、iPhone iPadの誕生秘話、そして引退まで、スティーブ・ジョブズ自身がすべてを明らかに。本人が取材に全面協力したからこそ書けた、唯一無二の記録。約3年にわたり、のべ数十時間にもおよぶ徹底した本人や家族へのインタビュー。未公開の家族写真なども世界初公開。

pc読むきっかけ&目的&感想

スティーブ・ジョブズが亡くなってから一月経たない間に発売され、昨年かなり話題になった本なので遅ればせながら読んでみた。

『カリフォルニアのばあさんブログ』の2011年10月18日 スティーブジョッブスの事 ミーハー的ですみません、TBSラジオ『キラ☆キラ』の町山さんのコラ☆コラ(2011.10.21)で彼自身に興味を持った。ニュースでも盛んに取り上げられていたし、テレビやラジオで特集番組が組まれたりもした。実際はどんな人だったんだろうか?

さくら好み ★★★☆☆

ところどころ読み飛ばしてしまったけど、とても面白かった。

pc備忘録

「現実歪曲フィールド」

「それは無理だ、不可能だ」
とハーツフェルドは抗議したが、ジョブズは反対意見に耳を貸さないのだとトリプルは言う。
「この状況は、『スター・トレック』の言葉が一番よく表現できると思う。スティーブには、現実歪曲フィールドがあるんだ」
「は?」
「彼の周囲では現実が柔軟性を持つんだ。誰が相手でも、どんなことでも、彼は納得させてしまう。本人がいなくなるとその効果も消えるけど、でも、そんなわけで現実的なスケジュールなんて夢なのさ」

名付け親のトリプルによると、この言葉は、『スター・トレック』の「タロス星の幻怪人」という回から思いついたという。宇宙人が精神力だけで新しい世界を生み出すお話だ。「現実歪曲フィールド」は、警告であるとともに賛辞でもあった。「スティーブの現実歪曲フィールドにとらえられるのは危険なのですが、でも、あの力があるから実際に現実を変えられたわけです」。

最初はそんな大げさなと思ったハーツフェルドも、2週間ほどでそれが本当だと思い知った。「カリスマ的な物言い、不屈の意思、目的のためならどのような事実でも捻じ曲げる熱意が複雑に絡み合ったもの――それが現実歪曲フィールドです」。この力から逃れる術がまずないこともハーツフェルドは学ぶ。「その存在を意識しても、現実歪曲フィールドは効果を発揮するんですよ。なんとか無効化できないものかとざまざまな方法を検討しましたが、結局、ほとんどの人はあきらめ、自然界にはそういう力も存在するのだと受け入れてしまいました」。

現実歪曲フィールドは、「ジョブズはよくうそをつく」をオブラードにくるんだ表現のようにも見える。しかし実際は、もっと複雑な話である。歴史的な事実であれ、あるアイデアを会議で提案したのが誰かという記憶の話であれ、なにが真実なのかを考えることなく断言してしまう。他人に対してだけでなく自分に対しても、現実の認識を強烈に拒むのだ。この点についてはビル・アトキンソンも同じように考えている。「スティーブは自分自身さえだましてしまいます。そうして自ら信じ、血肉としているからこそ、ほかの人たちを自分のビジョンに引きずり込めるのです」。

ジョブズからの入力にローパスフィルターを適用

「温めていたアイデアを話して大ばか野郎と言われたのに、翌週、『すごくいいことを思いついたぞ!』と私のアイデアを教えにきてくれたりするんです。『先週、私がお話したことですが?』と言っても、『うんうん、とにかく進めてくれ』で終わりです」。

ジョブズの頭には、激しい意見がポンと浮かんだとき、その鋭いピーク信号を平滑化する回路が欠けているとも考えられる。だからマックチームでは、オーディオ回路に用いられる「ローパスフィルター」という概念を応用することにしました。ジョブズからの入力に対し、信号の高周波成分の振幅を小さくする処理を施すわけだ。こうすればデータセットのぶれがスムーズになり、蘭降下する彼の言動から、いらつくジッタの少ない移動平均が得られる。ハーツフェルドは言う。「両極端に振れる言動を何回か経験したあと、我々は、スティーブの信号にローパスフィルターを適用し、極端に反応しないようになりました」。

見えないところもすべて美しく仕上げる

かつてジョブズは父親から、優れた工芸品は見えないところもすべて美しく仕上がっているものだと教えられた。これをジョブズがどれほど突き詰めようとしたのかは、プリント基板の例を見るとよくわかる。チップなどの部品が取り付けられたプリント基板はマッキントッシュの奥深くに配置され、消費者の目には触れない。そのプリント基板でさえジョブズは、美しさを基準に評価したのだ。いわく、その部品はすごくきれいだ。いわく、あっちのメモリーチップはみにくい、ラインが密すぎる――と。

そのようなことに意味はないと新参のエンジニアが反論したことがある。「重要なのは、それがどれだけ正しく機能するかだけです。PCボードを見る人などいないのですから」。ジョブズはいつもどおりの反応をする。「できるかぎり美しくあってほしい。箱のなかに入っていても、だ。優れた家具職人は、誰も見ないからとキャビネットの背板を粗悪な板で作ったりしない」。

マッキントッシュの内側に彫り込まれたサイン

デザインが完成したとき、ジョブズはマッキントッシュチームを集めてお祝いをした。「アーティストは作品に署名を入れるんだ」、そういうとジョブズは製図用紙とシャーピーのペンを取り出し、全員に署名するよう求めた。

このサインは、すべてのマッキントッシュの内側に彫り込まれている。修理の担当者でもなければ絶対に目にするはずがないが、チームメンバーは皆、自分の署名がそこに彫り込まれていると知っている。回路基板ができるかぎりエレガントに作り込まれたと知っているように。

一人ひとり、ジョブズに名前を呼ばれた人がサインしてゆく。最初はピュレル・スミス。ジョブウズは、メンバー45人が全員サインしたあと、真ん中あたりに残っていた空白にサインをした。ぜんぶ小文字のきれいなサインだ。そしてシャンパンで乾杯。

「最終的な成果をアートだと感じさせてくれるのは、こういうときなのです」とアトキンソンはほほえんだ。

メメント・モリ

2003年10月のがん宣告を秘密にしたように、ジョブズは、がんとの闘いが続いていることを隠し、自分は「治った」と公言していた。

製品発表のステージ以外、スピーチはほとんどしないジョブズが、2005年6月の卒業式で話をしてほしいというスタンフォード大学の依頼を受けたのだ。がんを宣告されたこと、50歳となったことから、いろいろとふり返ってみたい心境になったらしい。

スピーチは「体験談をお聞かせしましょう」ではじめるのが一番いいと、作家、アレックス・ヘンリーが語ったことがある。講話を聞きたいと思う人などいないが、体験談は皆に歓迎されるのだ。このアプローチをジョブズも採用した。

「今日はみなさんに私の体験談を3つ、お話ししようと思います。それだけです。特別な話しをするつもりはありません。体験談を3つです」

学生を本当に惹きつけたのは3番目の話だった。がんと診断され、その結果、なにを思ったのかについての話だ。

人生を左右する分かれ道を選ぶとき、一番頼りになるのは、いつかは死ぬ身だと知っていることだと私は思います。

ほとんどのことが――周囲の期待、プライド、ばつの悪い思いや失敗の恐怖など――そういうものすべて、死に直面するとどこかに行ってしまい、本当に大事なことだけが残るからです。自分はいつか死ぬという意識があれば、なにかを失うと心配する落とし穴にはまらずにすむのです。

人とは脆弱なものです。自分の心に従わない理由などありません。

すごい製品を作りたいと社員が猛烈にがんばる会社を

僕は、いつまでも続く会社を作ることに情熱を燃やしてきた。すごい製品を作りたいと社員が猛烈にがんばる会社を。それ以外はすべて副次的だ。もちろん、利益を上げるのもすごいことだよ? 利益があればこそ、すごい製品を作っていられるのだから。でも、原動力は製品であって利益じゃない。スカリーはこれをひっくり返して、金儲けを目的にしてしまった。ほとんど違わないというくらいの小さな違いだけど、これがすべてを変えてしまうんだ――誰を雇うのか、誰を昇進させるのか、会議でなにを話し合うのか、などをね。

僕は市場調査に頼らない

「顧客が望むモノを提供しろ」という人もいる。僕の考え方は違う。顧客が今後、なにを望むようになるのか、それを顧客本人よりも早くつかむのが僕らの仕事なんだ。欲しいモノを見せてあげなければ、みんな、それが欲しいなんてわからないんだ。だから僕は市場調査に頼らない。歴史のページにまだ書かれていないことを読み取るのが僕らの仕事なんだ。

みんな、そういうことを考える暇はないから

世間の人々は、僕らにお金を払っていろいろなものを統合してもらってるんだ。みんな、そういうことを一日24時間、年中無休で考える暇はないからね。すごい製品を作りたいと情熱に燃えていれば、統合に走るしかない。ハードウェアとソフトウェアとコンテンツ管理をまとめるしかないんだ。すべて自分でできるように、新しいところを拓きたいと考えるはずなんだ。他社のハードウェアやソフトウェアに対してオープンな製品にしようと思えば、ビジョンの一部をあきらめなければならないからね。

営業畑の人間が会社を動かすようになると

IBMやマイクロソフトのような会社が下り坂に入ったのはなぜか、僕なりに思う理由がある。いい仕事をした会社がイノベーションを生み出し、ある分野で独占かそれに近い状態になると、製品の質の重要性が下がってしまう。そのかわり重く用いられるようになるのが“すごい営業”だ。売り上げメーターの針を動かせるのが製品エンジニアやデザイナーではなく、営業になるからだ。その結果、営業畑の人が会社を動かすようになる。IBMのジョン・エーカーズは頭が良くて口がうまい一流の営業マンだけど、製品についてはなにも知らない。同じことがゼロックスにも起きた。

営業畑の人間が会社を動かすようになると製品畑の人間は重視されなくなり、その多くは嫌になってしまう。スカリーが来たときアップルもそうなってしまったし――これは僕の責任だった――パルマーがトップになったときマイクロソフトもそうなった。幸いなことにアップルは立ち直れたけど、マイクロソフトはパルマーが経営しているかぎり変わらないだろう。

巨人の肩に乗って

なにが僕を駆り立てたのか。クリエイティブな人というのは、先人が遺してくれたものが使えることに感謝を表したいと思っているはずだ。僕が使っている言葉も数学も、僕は発明していない。自分の食べ物はごくわずかしか作ってないし、自分の服なんて作ったことさえない。

僕がいろいろできるのは、同じ人類のメンバーがいろいろしてくれているからであり、すべて、先人の肩に乗せてもらっているからなんだ。そして、僕らの大半は、人類全体になにかをお返ししたい、人類全体の流れになにかを加えたいと思っているんだ。それはつまり、自分にやれる方法でなにかを表現するってことなんだ――だって、ボブ・ディランの歌やトム・ストッパードの戯曲なんて僕らには書けないからね。僕らは自分が持つ才能を使って心の奥底にある感情を表現しようとするんだ。僕らの先人が遺してくれたあらゆる成果に対する感謝を表現しようとするんだ。そして、その流れになにかを追加しようとするんだ。

そう思って、僕は歩いてきた。

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Steve_and_apple


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コメント

iPad(またはタブレット端末)で生活スタイルが変わった。
パソコン時間が大幅に減った。寝転がってWeb見たりゲームしたり読書したりと楽々なスタイルになったo(*^▽^*)o

もともとiPodでmusicからpodcastまで使っていて日々欠かせないものになっていたので、
ジョブズ氏の作品のもとで生活している時間が多いんだなってつくづく思う今日この頃であーる。
(o^-^o)

投稿: nono1 | 2012年2月10日 (金) 06時35分

iPhoneとiPadの登場で主流がガラッと変わったよね(私自身は未だその系統に乗り遅れているけど)。

本書を読んで、そしてnono1のコメントを読んで改めて思ったけど、ジョブズ氏は商品を通して新たなライフスタイルを提案し続けていたんだな~と。

ジョブズ氏は居なくなってしまったけど、彼が創ったAppleの今後にも期待したい。 ^^♪

投稿: さくらスイッチ | 2012年2月11日 (土) 06時15分

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