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2011年11月17日 (木)

252 『赤めだか』 立川談春 初版2008年

江戸の笑い♪

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fuji概要

サラリーマンより楽だと思った。とんでもない、誤算だった。落語家前座生活を綴った破天荒な名随筆。

<著者略歴>立川 談春 :  昭和41年、東京都生まれ。昭和59年、立川談志に入門。平成9年、真打昇進。「林家彦六賞」「国立演芸場花形演芸会大賞」「彩の国拾年百日亭若手落語家シリーズ大賞」等々、多数受賞。平成18年、東京・池袋で「談春七夜」と銘打った七夜連続独演会を敢行、話題を呼んだ。

fuji読むきっかけ&目的&感想

以前TBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』の「ゲストdeダバダ」のコーナーでのトークが面白かったので読んでみた。

さくら好み ★★★★★

落語の背景にある江戸の人情や文化、落語家の背景にある現代の人情や文化を感じることが出来て、とっても面白かった。

fujiメモ

◆「落語とは人間の業の肯定である」

中学卒業間近、上野鈴本へ落語を聴きに行くという企画があった。同級生はほとんどが落語初体験。前座からまァよく笑っていた。そんな中で立川談志登場。

「あのネ、君達にはわからんだろうが、落語っていうのは他の芸能とは全く異質のものなんだ。どんな芸能でも多くの場合は為せば成るというのがテーマなんだな。一生懸命努力しなさい、勉強しなさい。そうすれば必ず最後はむくわれますよ。良い結果が出ますよとね。忠臣蔵は四十七士が敵討ちに行って、主君の無念を晴らす物語だよな。普通は四十七士が主人公だ。スポットライトを浴びるわけだ。でもね赤穂藩には家来が三百人近くいたんだ。総数の中から四十七人しか敵討ちに行かなかった。残りの二百五十三人は逃げちゃったんだ。まさかうまくいくわけがないと思っていた敵討ちが成功したんだから、江戸の庶民は拍手喝采だよな。そのあとで皆切腹したが、その遺族は尊敬され親切にもされたんだろう。逃げちゃった奴等はどんなに悪く云われたか考えてごらん。理由の如何を問わずつらい思いをしたはずだ。落語はね、この逃げちゃった奴等が主人公なんだ。

人間は寝ちゃいけない状況でも、眠きゃ寝る。酒を飲んじゃいけないと、わかっていてもつい飲んじゃう。夏休みの宿題は計画的にやった方があとで楽だとわかっていても、そうはいかない。八月末になって家族中が慌てだす。それを認めてやるのが落語だ。寄席にいる周りの大人をよく見てみろ。昼間からこんなところで油を売ってるなんてロクなもんじゃなねェョ。でもな努力して皆偉くなるもんなら誰も苦労はしない。努力したけど偉くならないから寄席に来てるんだ。『落語とは人間の業の肯定である』。よく覚えときな。教師なんてほとんど馬鹿なんだから、こんなことは教えねェだろう。嫌なことがあったら、たまには落語を聴きに来いや。あんまり聴きすぎると無気力な大人になっちまうからそれも気をつけな」

◆「明日になりゃ一陽来復だ」

古典落語には“冬の噺”に名作が多いと云われている。

寒さは貧乏を際立たせ、共感させ、少々無理なシチュエーションまでもを納得させる力を持っているからだろう。次に、正月、元旦に日本人全員が一斉に年をとるという風習が過去にはあり、それによって大晦日も新年も現代では想像できないほど神聖な儀式だったのだと思う。

今年は悪い年だったと嘆く人には、「いつまでも過ぎたことを、グズグズ云うねェ。除夜の鐘と一緒にきれいサッパリ忘れちめェ」であり、「良いことばかりあるわけじゃねェだろうが、悪いことばかり続くと決まったもんでもねェよ。明日になりゃ一陽来復だ。生まれ変わってやり直しだ」となる。

忘れる、やり直せる、生まれ変わって幸せになれる。みんなが信じるなら自分だってそう思い込んでも恥ずかしくはない、と救いにすがれる時代だったのだろう。

富久でも芝浜でも、文七元結でもツイてないと拗ねてあきらめかけている人間が(ツイていない要因は全て自業自得とも云える三道楽、つまり、酒、女、博打に自分が入れ込んでしまったあげくのことなのだが)、神様の気まぐれとしか云いようのない与えられた幸運、偶然でハッピーエンドを迎える。

これがまた落語の凄いところだと思う。改心して、努力して、必死に懸命に生きた結果、つかんだささやかな幸せ、なんていう話は、ただのひとつもない。

いきなり大金拾っっちゃったり、富くじ(現代の宝くじ)の一等が当たっちゃったり、はっきり云って滅茶苦茶、出鱈目なのだ。

「人は救われる。信じていれば大丈夫」というメッセージしかない。「信じるという行為には、とてつもなく力がいるのだよ」という教えすらない。

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コメント

「落語とは人間の業の肯定である」なるほどね、確かにそうだね。
「おもしろうてやがてやがて悲しき」というフレーズが浮かんだよ。(o^-^o)

投稿: nono1 | 2011年11月20日 (日) 09時37分

なるほど、通ずるところがあるね。

江戸落語、同じものを何回聞いても面白さが色あせないのが面白い。
聞き終えて、時にふっと悲しくなるのが判っているのに止められない(笑

投稿: さくらスイッチ | 2011年11月20日 (日) 16時48分

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