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2010年5月28日 (金)

196『1Q84 -BOOK3』 村上春樹 初版2010年

1牛河 2青豆 3天吾 4牛河 5青豆 6天吾 7牛河 8青豆 9天吾
10牛河 11青豆 12天吾
 13牛河 14青豆 15天吾 16牛河 17青豆 18天吾
19牛河 20青豆 21天吾 22牛河 23青豆 24天吾
25牛河 26青豆 27天吾 28牛河 29青豆 30天吾  31天吾と青豆

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moon1概要

1949年にジョージ・オーウェルは、近未来小説としての『1984』を刊行した。そして2009年、『1Q84』は逆の方向から 1984年を描いた近過去小説である。そこに描かれているのは「こうであったかもしれない」世界なのだ。私たちが生きている現在が、「そうではなかったかもしれない」世界であるのと、ちょうど同じように。

moon1読むきっかけ&目的&感想

村上春樹の本、というと10代の学生が好むという勝手なイメージを持っていた。私自身も高校生のころに数冊読んだけど、なんだか好きになれなかった。そのまま村上春樹の本を手にすることはなかったけど、「1Q84 BOOK1」「1Q84 BOOK2」が凄く話題になったので、あまり期待しないで読んでみた。これが思った以上には面白かったので、「BOOK3」も読んでみた。

さくら好み ★★★★★

1日の終わりに、1セット(牛河・青豆・天吾)ずつを、それ以上は読まないように気を付けながら、ゆっくり丁寧に読んだ。そしてお茶を飲みながら、ぼんやり考えたりした。・・・いつか、ふっと気付くものごとがあるかもしれない、な。

**********
1Q84から脱出できなかったら、青豆の生んだ子供が(ドウタふかえりの様な)レシヴァになって、天吾が(「さきがけ」リーダー=天吾の実父?の様な)パシヴァになり、「壁」を内包する「卵」だった青豆が「卵」を内包する「壁」になり、またリトルピープルが・・・

1Q84から脱出し、1984でも1Q84でもない新しい世界には、リトルピープル(=システム)に対する「抗体」である天吾の小説(=村上春樹『1Q84』)がある。新しい世界はリトルピープルに侵食されない希望のある世界。。。

moon1覚書

「スターリン禅」

「ここはタフな世界だ」

「希望のあるところには必ず試練があるものだから」と青豆は言う。

タマルはまた少し沈黙する。それから言う。「スターリン時代の秘密警察の尋問間が受ける最終テストの話を聞いたことがあるか?」

「ないと思う」

「彼は四角い部屋に入れられる。その部屋には何の変哲もない小さな木の椅子がひとつ置かれているだけだ。そして上官からこう命令される。『その椅子から自白を引き出して、調書をつくれ。それまではこの部屋から一歩も出るな』と」

「ずいぶんシュールレアリスティックな話ね」

「いや違うね、こいつはシュールレアリスティックな話なんかじゃない。尻尾の先までリアルな話だよ。スターリンはそういう偏執狂的なシステムを現実に造り上げて、在任中におおよそ一千万の人間を死に追いやった。そのほとんどは彼の同胞だった。俺たちは現実にそういう世界に住んでいる。そのことをよくよく頭に刻んでおいた方がいい」

信仰の深さと不寛容さ

「信仰の深さと不寛容さは、常に裏表の関係にあります。それはなかなか我々の手には負えないことです」

「不寛容さはどちらの側にもあったのです」

大事なもの、それなりの代価

「大事なものを手に入れるには、それなりの代価を人は支払わなくちゃならない。それが世界のルールだよ」

「そうかもしれません。しかし何が大事なもので何が代価なのか、区別がうまくつかないんです。あれやこれや、あまりに入り組んでいるから」

ここにいることは私自身の主体的な意思でもあるのだ

天吾と巡り合い、結びつくこと。それが私がこの世界に存在する理由だ。いや、逆の見方をすれば、それがこの世界が私の中に存在している唯一の理由だ。

あるいはそれは合わせ鏡のようにどこまでも反復されていくパラドックスなのかもしれない。この世界の中に私が含まれ、私自身の中にこの世界が含まれている。

人が一人死ぬというのは、この世界に穴がひとつぽっかり開いてしまうこと

「人が一人死ぬというのは、どんな事情があるにせよ大変なことなんだよ。この世界に穴がひとつぽっかり開いてしまうわけだから。それに対して私たちは正しく敬意を払わなくちゃならない。そうしないと穴はうまく塞がらなくなってしまう。穴を開けっ放しにしてはおけない。その穴から誰かが落ちてしまうかもしれないから」

「でもある場合には、死んだ人はいくつかの秘密を抱えていってしまう。そして穴が塞がれたとき、その秘密は秘密のままで終わってしまう」

「私は思うんだけど、それもまた必要なことなんだよ」

「どうして?」

「もし死んだ人がそれを持って行ったとしたら、その秘密はきっとあとには置いていくことのできない種類のものだったんだよ」

「どうしてあとに置いていけなかったんだろう?」

「たぶんそこには死んだ人にしか正確には理解できないものごとがあったんだよ。どれほど時間をかけて言葉を並べても説明しきれないことが。それは死んだ人が自分で抱えて持っていくしかないものごとだったんだ。大きな手荷物みたいにさ」

『冷たくても、冷たくなくても、神はここにいる』

カー ル・ユングは、スイスのチューリッヒ湖畔に自分で石をひとつひとつ積んで、丸くて天井が高い住居を築いた。その建物は『塔』と呼ばれた。やがて『塔』は必要に応じて仕切られ、分割され、二階がつくられ、その後いくつかの棟が漬け足された。壁には彼は自らの手で絵を描いた。それはそのまま個人の意識の分割と、展開を示唆していた。その家屋はいわば立体的な曼荼羅として機能したわけだ。

『塔』の入り口には、ユング自身の手によって文字を刻まれた石が、今でもはめこまれている。『冷たくても、冷たくなくても、神はここにいる』、それがその石にユングが自ら刻んだ言葉だ。

これからはこれまでとは違う

とにかくこれまで、前後のつながりがわからないまま、私のまわりでいろんな物事は進行してきた。その原理も方向もろくに見定められなかった。私は結果的にそこに巻き込まれたような形になっていた。しかしそこまでだ、と青豆は心を決める。

これからはこれまでとは違う。私はもうこれ以上誰の勝手な意思にも操られはしない。これから私は自分にとってただひとつの原則、つまりは私の意志に従って行動する。私は何があろうとこの小さなものを護る。そのために私は死力を尽くして闘う。これは私の人生であり、

そのことを知りたかった

心臓の上に耳をつける。彼の思いに耳を澄ませる。そのことを知りたかった、と青豆は言う。私たちが同じ世界にいて、同じものを見ていることを。

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< 『1Q84』、関連本の備忘録 >

108 『1Q84 BOOK1,BOOK2』 村上春樹 初版2009年

114 『村上春樹『1Q84』をどう読むか』 河出書房新社編集部 (編さん)  初版2009年

125,126 『ア ンダーグラウンド』 初版1997年、『約束された場所』 初版1998年 村上春樹

148 『一 九八四年[新訳版]』 ジョージ・オーウェル 初版2009年

196 『1Q84 -BOOK3』 村上春樹 初版2010年

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