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2010年5月 8日 (土)

186『コケの手帳』 初版2002年

花の咲く植物と違って 人目につかない植物「コケ」

でも実はとっても身近に存在している・・・

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sun概要

根がなくても小さくても立派な植物。完全に枯れたと思ってもどっこい生きている。小さいのに数千年生き続ける生命力の不思議。他にもいろいろある小さなコ ケのパワーと謎に包まれた生き様を、多様な資料や写真でダイナミックに紹介する。

sun読むきっかけ&目的&感想

何年か前に京都の西芳寺に拝観申込みをして苔庭を見に行ったことがある。その時、緑の絨毯に落ちる木漏れ日の美しさに息を呑んだ。そして数ヶ月前、たまたま盆栽作りの苔岩(?)を見て、小さいながらに世界を構成していてとても美しいと思った。それで自分もちょっと育ててみたくなり、苔の生態と育て方を知りたくなり、とりあえず本書を借りてみた。

さくら好み ★★★☆☆

思いもかけず、『ナウシカ』や『天空の城ラピュタ』を想い出すような記述があり、面白かった。

それはともかく、とりあえず石の割れ目に土を詰めて小さなシダとスミレを植えて、苔を貼り付けてみた。そして石の傍にエビネを移植してみた。無事に根付くかな? 上手くいったら追って画像をアップロードしたいな~

sun覚書

◆ヒカリゴケ

文化財保護法によって指定された天然記念物は、1995年現在では955の指定物件があります。そのうち植物は534件となっています。天然記念物のコケ植物は、ヒカリゴケとミズスギゴケ(ヒロハススキゴケ)の二種類です。

ヒカリゴケに関しては、岩村田(長野県)、吉見百穴(埼玉県)、江戸城跡(東京都)の三生育地で天然記念物に指定されています。ヒカリゴケは、一科一属一種の蘇類です。日本からは1910年に岩村田で最初ですが、現在では中部以北の各地から報告されています。山地の洞穴の中や大きな岩のすきまなど、薄暗い湿った土上に生育しています。

2010_2 ヒカリゴケはなぜ光って見えるのでしょう。ホタルなどのように、自ら光を放っているのでしょうか。それは、ヒカリゴケの原糸体のつくりに秘密があります。ヒカリゴケの胞子が発芽すると、細胞分裂を繰り返して細胞が一列に並んだ糸状の構造物(原糸体)をつくるのですが、原糸体の細胞の一部はレンズ状になっています。このレンズ状の細胞は、洞穴などに入ってくる光の方向と直角になるように平面的に並んでいます。そのため、入ってきた光がこのレンズ状の細胞の中にある(入ってくる光とは反対側に位置している)葉緑体に反射されて出てきます。この反射光が人の目に届くことで、ヒカリゴケが自ら発光しているように見えるのです。したがって、原糸体の上にできた芽から成長してできた配偶体、つまりヒカアリゴケの本体は光りません。

江戸城のヒカリゴケは、1972年に天然記念物に指定されました。これは江戸城が築城された時に運び込まれた岩石に付着していたものが、連綿と現在まで生き残ったものと考えられます。とても不思議なことですが、大きな岩のすき間がヒカリゴケの生育に最適な環境を創出したものと考えられます。

樹幹着生蘇苔類は大気汚染に弱い

コケというとじめじめした土の上に生えているという印象が強いかなと思いますが、実際にはコケはありとあらゆるところに生育場所を見つけて、けなげにかつ力強く生きています。土の上はもとより、他の植物の上、石の上、人がつくったブロック塀やコンクリート壁にまで生育しています。しかし、ひとつの種類があらゆるところに生育しているわけではありません。それぞれ住みやすい環境を持っているようです。

Dvc00002_2 樹幹着生蘇苔類(木の幹に着生して生育しているコケ)にも大きな障害が起きています。大気汚染の存在です。大気や雨水が純粋な状態だとすれば、樹幹着生はコケにとって非常に心地よい場所であるに違いありません。しかし、大気や雨水中にコケにとって好ましくない物質が混ざりこんでいるとしたらどうでしょうか。コケも緑色植物の仲間です。酸素や二酸化炭素といった大気や水は生育に欠かせないものです。それが、汚染されているとしたら生育が悪くなるどころか枯れてしまう危険性もあります。

大気汚染が劣悪化した場合に、樹幹着生植物が衰退していく様子が初めて観察されたのは、19世紀のことでした。これはヨーロッパのニランダーという人によって発見されたものですが、産業革命以降の石炭消費に伴う大気汚染が原因で、豊富にあった樹幹着生地衣類が各地で消費してしまったのでした。同様にアーノルドという人は樹幹着生蘇苔類も大気汚染に感受性が高いことを発見しています。その後、ヨーロッパや北米などの各地で、樹幹着床植物の分布調査がなされ数多くの報告書が出されましたが、まさに大気汚染物質濃度の高い地域には樹幹着生植物が消失するという事実が裏付けられました。

ニランダーがこの事実を発見した当時から20世紀半ばまで過ぎまで、大気汚染物質の主要成分は硫黄酸化物でした。これは水に溶け込むと非常に強い酸化力を持つものです。しかしながら、現在は硫黄酸化物濃度は格段に低減しました。替わって自動車の使用量の増加に伴って窒素酸化物やそれが光化学反応を起こして生成される光化学オキシダントなどの大気二次汚染物質が増加しました。これら新しい汚染物質も硫黄酸化物ほどではないにしろ、樹幹着生植物に対して強い毒性を示すといわれています。

コケは大気汚染に対する指標性を持つ

この大気汚染に対する感受性には種による差異があります。大気汚染に対してまったく弱いものもいればある程度耐性を持っていて、大気汚染に弱い種類の生育が衰えて競争が少なくなるなることで、その分布範囲を拡大する種類もいます。つまり、コケが樹幹を広く覆っていても種類が少ないのだとすると、やはり大気汚染の影響があるということが理解されるわけです。この性質をうまく利用して、コケの種類組成とその量を測定することで大気汚染濃度を指標する試みが誕生しました。それが、カナダの東部で考案された大気清浄度指数といわれる指標値です。世界の色々な都市で適用されて、汚染物質の濃度と非常に高い負の相関があることが確認されています。

Dvc00001 これは結構手軽に利用できるもので、小学校や中学校などの環境教育としても利用価値が高いものかもしれません。コケの種類がすべてわからないと正確な値は出せないかもしれませんが、おもな種類を数種選択して、その生育分布観察するだけでもその地域のおおよその汚染度が理解できます。

もちろん、大気汚染濃度を調べるには専用の測定機器を用いた方が正確に測ることができるでしょう。しかしそれは単一の汚染物質それぞれに対してであり、実際にはそれらの汚染物質が複雑に関与して生物に影響を与えるので、その複合的な影響を物理化学方法で直接測定することは容易ではありません。複合的な影響を把握するためには、その場所に生育している生物を生物指標として用い、それらの反応から評価することが望ましいといえます。

コケは金属や放射性物質に対する指標性も持つ

コケの大気汚染に対する指標性は高く評価されているものですが、金属に対しても同様に指標性があるといわれています。中でも、重金属は汚染物質の中でも非常に重要な物質ですが、重金属の降下量増加は腐植等の分解率や生態系の生産力の低下などに大きく影響することが示されています。コケ類はそういった毒性のある金属をその植物体内に蓄積する性質があるのです。

銅や鉛以外の重金属、たとえば水銀やカドミウム、ニッケル、鉄、マンガンなどもコケは蓄積する傾向にあるようです。生育基物に含まれる金属はもちろんのこと、生育基物中には存在しない金属までもコケは植物体内に取り込んでしまうといわれています。多くの金属汚染物質は大気中を漂って長距離を運搬されるといわれていますが、市街地から遠く離れた北極地方に生育するコケ群落中にも濃縮された金属の存在が確認されています。このことは、大気汚染が汚染源近く(つまり都市部)だけの問題ではすまされないということを示唆するものでしょう。

さらにもっと大変な強者のコケがいます。なんと放射性物質までも貯め込むコケがあるというのです。放射性ストロンチウム含量の高い土壌上に生育するコケは、この元素を高濃度で含有しているという報告があります。また、放射性ウランについても同様であるといわれています。コケは原子爆弾の実験による放射性物質の降下量を計る指標植物としてや、原子力発電所周辺のモニタリング等に利用可能であるといわれていますが、蓄積する能力に注目して微量に漏れる放射能汚染を浄化する目的でコケを植えて放射性物質を吸着させようとする研究が進められています。

Photo

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コメント

なんか苔って癒されるな~♪
アップロード楽しみにしてるねーscissors

投稿: nono1 | 2010年5月 8日 (土) 21時26分

がんばる! rock

投稿: さくらスイッチ | 2010年5月 9日 (日) 08時20分

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