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2010年4月 9日 (金)

174『野草手紙 独房の小さな窓から』 フォン・デグォン 初版2004年

草の香りあふれる生命の告白書

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clover概要

アメリカ留学中の1985年、見に覚えのないスパイ容疑で国家安全企画部(現韓国国家情報院)に逮捕され、無期懲役の宣告を受け、投獄から5年、ファン・ デグォンは心身ともに疲弊し、もはや生きる意味を見失っていた。そんなときふと目にとまったのが、刑務所の片隅にうごめく虫や人知れず咲く野草の生命の営みだった。自分のからだ以外に見るべきものもない独房のなかで、自らの命の延長をそこに見いだしたのだった。本書は、釈放されるまでのあいだ獄中から妹に 宛てて送られた書簡集である。素朴な水彩画を描く著者の穏やかなまなざしの奥には、絶望の果てに生命の限りない力を見いだした者の喜びがあふれている。 (原作 初版2002年)

clover読むきっかけ&目的&感想

植物関係の本を探していて偶然見つけた本。スパイ容疑で刑務所に投獄されている人の視線で見る植物の姿に興味を持ったのと同時に、韓国に生えている「みちくさ」の種類にも興味を持った。

さくら好み ★★★☆☆

知っている野草も多くて面白かったし、文章に添えられた野草スケッチも可愛らしくてよかった。そして何より、著者が野草に投影する心情が興味深かった。

clover覚書

◆著者

황대권(ファン・デグォン/黄大権)

6000193970_20090228  1955年ソウル生まれ。著述家、生態共同体活動家。ソウル大学農学部卒業。その後、政治学を学ぶためにアメリカへ留学。留学中の1985年、身に覚えの ないスパイ容疑で、国家安全企画部(現韓国国家情報院)に逮捕され、無期懲役の宣告を受ける。特赦によって釈放されるまでの13年2か月間、牢獄生活を送る。

 釈放後、農業を始める。1999年、アムネスティ・インターナショナルの招きで2年年ヨーロッパに滞在し、ロンドン大学インペリアルカレッジで農業生 態学を学んだ。現在、生態共同体研究会を主宰するとともに、緑色大学に生命農学教授として在籍。

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1985年当時、ファン・デグォンは研究心旺盛で情熱あふれる青年だった。留学先のニューヨークから韓国へ一時帰国した際、突如として逮捕されるまでは・・・・・。不運にも、軍事独裁政権の毒牙にかかり、スパイに仕立て上げられてしまったのだ。結婚して間もなかった彼は、息子がようやく生後1ケ月を迎えた頃、無期懲役を宣告され離婚に追い込まれている。

軍事独裁時代が終わりを告げ、韓国にも民主化の波が押し寄せてきた。同時に、アムネスティ・インターナショナルなどの粘り強い支援が実を結び、1998年、ついに釈放。13年2ヶ月におよぶ独房生活だった。その後、一連のスパイ容疑は国家のでっち上げだったことがマスコミで大々的に報道される。

晴れて「自由の身」となった著者は、イギリス留学のチャンスを得て農業生態を学んだ。2001年には再婚し、新たなスタートを切っている。各地での講演、執筆活動にも精力的だ。

しかし、現実にはいまだ完全な「自由の身」とは言いがたい。「保安観察処分」の対象者となっているため、私生活まで監視される日々が、いつ終わるともなく続いているのだ。「小さな監獄から大きな監獄に移っただけだ」と語る著者が、本当の自由を手にする日は来るのだろうか。

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