« 172『葉っぱの不思議な力』 鷲谷いづみ 埴沙萠 初版2005年 | トップページ | 173 『ほんとの植物観察〈2〉庭で、ベランダで、食卓で』 室井綽 清水美重子 初版2003年 »

2010年4月 5日 (月)

173『ほんとの植物観察〈1〉ヒマワリは日に回らない』 室井綽 清水美重子 初版2003年

アサガオの蔓は 北半球では左巻き! 南半球では右巻き!?

Dvc00001

bud概要

アサガオやアジサイ、サクラ、ツバキに、フジ、タンポポなどなど…。この本で取り上げたのは、だれでも一度は目にしたことがある身近な植物ばかりです。で も、アサガオを、アジサイを、あなたは本当に知っていますか? 「うそっ!」と「ほんと?」を見分けながら、植物の見本の本質を教えます。

83年刊の新装改訂。

bud読むきっかけ&目的&感想

以前は書店やアマゾンなどで本を購入していたけど、2007年末に仕舞い切れなくなった本の山を眺めて私は溜め息をつき、2008年初旬から図書館 で本を借りることに切り替えた。手元に本が残らないので、備忘録として本ブログをつけることにした。

それ以来、たまに延長して四週間借りている時もあるけど、大抵は二週間ごとに図書館に通うようになった。わたしが通う図書館は大きな公園の端にある ので、図書館に行った時は公園の中を散歩するようになり、四季折々の植物を一年通して目にするようになった。

公園の良い所は、植物に名札がついて簡単な説明が書いてあることだ。田舎の山の中だったらこうはいかない。そして次第に名札のついていない植物にも目を向けるようになり、気になる草花を図書館でちょこちょこ調べるようになった。

そんな気分の延長で、本書を借りて読んでみた。

さくら好み ★★★★☆

bud覚書

◆アサガオの蔓は左巻き? 右巻き?

アサガオの蔓は左巻きです。ある文芸誌に、南半球では右巻きになると書かれていました。これはおもしろいと思って、先年、アメリカからメキシコ、ペルーに至る旅をしたときに注意して見ましたが、私の見る限りでは、すべて左巻きでした。

どうしてか不思議に思いましたが、左巻き、右巻きの定義が、南米と日本では反対であっただけのこと、つまり巻き方には世界的な決まりがないということで納得しました。

アサガオの栽培熱は、江戸時代、とくに文化文政期(1804‐30年)にさかんになり、多数の突然変異が出現しました。『朝顔水鏡』(1818年)には、当時の変異体の花形と葉形とが図示されています。

アサガオの蔓の巻き方は、本によって右巻きとも書いてあって、読む方で混乱をきたしますが、文部科学省が編集した指導書の中に「アサガオの蔓は左巻き」と書かれています。日本ではアサガオの蔓の巻き方や台風の回り方を「左巻き」、「左回り」といい表しています。

しかし、蔓の巻き方、ねじの呼び方は、国によってさまざまです。

◆アジサイの花の色

アジサイの花の色は、時間と共に微妙に微妙に変化していきます。その原因は細胞の中に二酸化炭素が蓄積されると、水素イオン濃度が変化し、それによってアントシアンやフラボン系の物質も変化する、これほど正直に体内の変化を外部に現す花も少ないと言えましょう。

またアジサイは土壌の性質によって、花色が変わることも知られています。一般に酸性の土壌では青色はいっそう冴えて美しくなります。これは土の中のアルミニウムや鉄が、酸に溶解して吸収されるからで、鉄やアルミニウムが可溶性の状態で存在することを示すものといわれています。花の色を決めるのは、アントシアンやアルミニウム、さらに別の有機化合物(助色素)がお互いに作用し合うのではないかと考えられています。

日本の土壌は酸性なので、一般に青色のものが多く見られます。しかし、ベニガクは酸性土壌でも美しい赤で、これは、品種の特徴です。

◆オオイヌノフグリの効率的な受粉の仕組み

オオイヌノフグリは日中は昆虫の助けを借りて同花受粉をします。この花を訪れる虫はハナアブやハナバチなどで、花に虫が止まると、その重みで花が傾くので、虫は必然的におしべにしがみつき、その結果、おしべの葯とめしべの柱頭とが触れ合って、花粉が柱頭や虫の体につくのです。そして、日がかげり出すとゆるやかな運動によって、おしべとめしべが近づいて互いに触れ合い、自動的に受粉します。

この効率のよい受粉の仕組みによって、オオイヌノフグリは、帰化植物でありながら、日本の春を先取りしてしまったようです。最近では在来種のイヌノフグリ(自家受粉しない)の方は片隅に追いやられてしまったのか、あまり見かけなくなりました。

◆オオイヌノフグリの葉

オオイヌノフグリは明治20年ごろにヨーロッパから渡来した二年生の雑草ですが、日本中至る所で野生化しています。茎をよく見ると、葉が対生している所と、互生している所とがあります。対生している所は本当の葉ですが、互生している所は真正の葉ではなく、苞(苞葉)といわれるものです。この苞が互生し出したころから花がつき、実を結んで、五月には枯れてしまいます。

◆ネコヤナギは「方向指示植物」

ネコヤナギの徒長枝は、秋になっても長く伸びて丁芽ができません。したがって、花が咲いても、一本の枝の途中だけにしか花穂はつきません。

晩秋になると、ネコヤナギの葉柄は膨れ、花芽を包んで保護し、芽鱗(苞葉)となります。まだ寒い二月の終わりから三月ごろ、ほんのわずかの暖かさを感じ取った花芽は、帽子を脱ぐように芽鱗を落とし、花を開きます。ヤナギ類の花穂は「ネコ」と呼ばれ、小苞から出た絹毛で覆われています。早春の日を浴びた花穂は、南に面した方が大きく膨れて開花するので、その先端は北を指すことになります。それで早春に山で道に迷ったときは、「谷側に出てヤナギの花穂を見ろ」といわれているのです。「方向指示植物」、あるいは「コンパス・プラント」、「磁石の木」といわれる由縁です。

◆ハルジオンとヒメジョオン

ハルジオンは原野や畑地でよく見られる雑草で、よく似たヒメジョオンとともに北アメリカ原産の帰化植物です。

ヒメジョオンは明治維新前後にわが国に渡来したことから、「御維新草」とか、「世代ワリ草」、また、鉄道の発達とともに全国的に広がったので「鉄道草」などの名があります。

ハルジオンはそれよりも遅れて、大正年間に園芸植物として入り、戦後、関東地方を中心に爆発的に広がり、いまではごく一般的な雑草になっています。

Dvc00001◆ヒガンバナは非常食

ヒガンバナの鱗茎には、リコリンというアルカロイド系の毒素が含まれ、そのまま食べると激しい嘔吐作用がありますが、鱗茎の毒は水で晒すことによって無毒となり、多量のでんぷんが得られるので、古くから飢饉のときには、それを食用にしてきました。また、このでんぷんは強力な糊としても利用され、壁土に鱗茎の擂りおろしたものを混ぜて塗ると、ネズミの害を妨げるといわれています。

*ヒガンバナ(彼岸花)= 「マンジュシャゲ(曼珠沙華)」は、梵語で「天上に咲く花」の意味。「花は葉知らず、葉は花知らず」である。「花は葉を思い、葉は花を思う」という意味から、韓国では「サンチョ(相思華)」と呼ぶ。

◆モクセイは日本で栽培すると性転換する

秋の訪れを初めに告げるモクセイは、澄み切った青空にふくいくたる香りを放ちます。

キンモクセイやギンモクセイは中国原産の花木で、雌雄異体ですが、どういうわけか日本で栽培すると、性の転換をおこして雄性化し、いまだに雌株は知られていません。気候風土の違いがそうさせるのか、その理由はわかりませんが、おなじように春の香りを運ぶジンチョウゲやクロヤナギ、フリソデヤナギなども日本では雄株しか見つかっていません。

◆モクセイには花びらが無い

モクセイは不思議な植物です。金色や銀色に輝く小さな星をちりばめたような花には、花びらというものがなく、四裂した花びら状のものは、実は萼(がく)なのです。その中に小さな二本のおしべと、一本のめしべがありますが、めしべは発達が悪いので実を結びません。

◆グミを食べ過ぎると便秘に

田舎で生まれ育った私は、麦秋にグミがサンゴのように赤く熟すのを、毎日のように見上げて育ったものでした。それが当時、唯一のおやつだったのです。

ところが、グミにはタンニンが多く含まれているので、あまりたくさん食べると便秘になります。それで二~三日塩漬けにして、タンニンが抜けておいしくなった実を食べたものでした。

◆シダレヤナギの雌雄判別

ヤナギの仲間はすべて雌雄異体で、シダレヤナギの雄株は枝が長く下垂しますが、雌株の方はあまり伸びません。このように花を見なくても雌雄の別がよくわかるものを「雌雄二型」といいます。

◆シダレヤナギは水辺を好む

シダレヤナギは日向性の著しい植物で、枝条が四方へ、幾重にも重なって下垂し、少しでも光を求めて同化作用しようと努力しています。その証拠に、下垂して葉は葉柄の基部で半転してみな表面を外側に向けています。そして、池の方へ下垂した枝は、水面からの反射光と湿気を求めて、一年間に三~六メートルも競い合って下に伸びていきます。だから、反射光のない所では、枝はあまり伸びません。

Dvc00006
*公園のヤナギ(2010.04.04)。これから池側がより伸びてくるのね~。

◆「柳に幽霊」

シダレヤナギは中国の原産で、古く日本に伝わり、平城京ではすでに都大路に植えられていました。万葉人が渡来したばかりの「梅」と「柳」をこよなく愛したことは、『万葉集』にウメが118首、ヤナギが39首も登場することからもわかります。平安京でもシダレヤナギは人気者で、素性法師は「見渡せば 柳桜をこきまぜて 都ぞ春の錦なりける」と詠んでいます。

時は流れて、明治維新後、最初に街路樹を植えたのは東京で、それはシダレヤナギだったそうです。関東大震災や東京大空襲で、二度も全滅しましたが、人々の努力によって復活し、「銀座の柳」はいまも健在です。

昔、ヤナギは神霊を降臨させる力があるとかで、陽の代表の木と信じられていました。ふつう神の依代となる木は常緑樹で、落葉樹のヤナギというのは例外です。それなのに信仰を集めてきた理由は、どの木よりも春の芽吹きが早く、陰の冬を送り、陽の春を迎える木であること、挿し木で簡単に繁殖すること、成長が早く生命力が旺盛であることなどがあげられ、美しく枝垂れる姿は、神の降臨にふさわしい木と考えたのでしょう。それで、屠蘇をヤナギの枝に結びつけて、大晦日に井戸の水面に吊るしたり、また、正月の三が日に使う祝箸もヤナギで作られていて、これで食事をすると、家中の厄災が払われるといわれています。

また、水辺を好むヤナギは、この世と異界の堺の象徴とされ、幸せや霊魂を呼び寄せる力があると信じられていました。「柳に幽霊」もその一つです。この世はすべて陰と陽から成り立ち、陰陽が整うように、水神の化身である陰の幽霊は、陽の木であるヤナギの下に出るのだそうです。

ヤナギを「楊柳」とも書き、かつてはこの枝でようじを作ったので「楊枝」と書きます。昔はヤナギの小枝の先端をたたいて房状にして歯を磨きました。

◆桜餅の葉

桜餅は芳しい香りを楽しむもので、葉ごと食べると、葉の塩味と餡の甘味とがミックスして最高の味になります。この芳香物質は「クマリン」といいます。桜餅に使う葉は、どんなサクラの葉でもよいというのではなく、オオシマザクラの葉です。

五月ごろ、オオシマザクラの若葉を摘んで塩漬けにします。このサクラは潮風に強く、幹も大きくなり、純白で気品にあふれた花をつけるので、広く栽培されていますが、もともとは伊豆半島が原産です。ここでは若葉を摘みやすいように、株元から伐採して小枝を出させ、二メートル以内に低く栽培しています。

◆サクラの葉で種類を同定する

サクラの葉には「花外蜜線」といって、葉柄、または葉身の基部に蜜線があり、その蜜線の位置は、種類を同定するときの重要な手がかりになります。ふつう蜜線は花の基部にあることが多く、甘い蜜を分泌して虫を呼び、花粉媒介に一役買っていますが、サクラの葉にある蜜線は、どのような働きを担っているのか、よくわかっていません。

オオシマザクラの蜜線①は葉柄上に二個つき、葉身の幅の最も広い所は中央より上です。また、広く栽培されているソメイヨシノの蜜線②は、葉柄と葉身の接点につき、葉身の幅の広い所はオオシマザクラより下で、葉の中央部あたりです。さらにエドヒガン③の蜜線は、葉身基部の葉縁につきます。

Img_0005_3

Dvc00013_2← 蜜線ハッキリわかった♪

|

« 172『葉っぱの不思議な力』 鷲谷いづみ 埴沙萠 初版2005年 | トップページ | 173 『ほんとの植物観察〈2〉庭で、ベランダで、食卓で』 室井綽 清水美重子 初版2003年 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 172『葉っぱの不思議な力』 鷲谷いづみ 埴沙萠 初版2005年 | トップページ | 173 『ほんとの植物観察〈2〉庭で、ベランダで、食卓で』 室井綽 清水美重子 初版2003年 »