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2010年4月 3日 (土)

171『花はふしぎ』 岩科司 初版2008年

身近な花の不思議 tulip

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tulip概要

地球上には約25万種が存在し、驚くべき多様性を持っている「花」。色の発現や開花のしくみ、環境への適応戦略など、知られざる花のふしぎと魅力に迫ります。

tulip読むきっかけ&目的&感想

立春も過ぎ、これからだんだんと日が長くなっていく。寒暖を繰り返しながら、桜も満開になった。この時期になると、ベランダにある空き鉢に今年も何かを植えたくなってくる。そして、本も植物関連のモノを読みたくなる。で、適当に選んで借りてみた。

さくら好み ★★★☆☆

レインボーカラーのバラ、チューリップ、カーネイションが存在する。人工的に染料を吸い上げさせているようなのだが、初めて見たときは驚いた。個人的には不気味に見えるけど、美しいといえば美しい。そんな花屋でしか拝めない人工的な切花も悪くはないけど、やっぱり季節に咲く花のほうに心惹かれる。これから春の花々が競うように咲き始めるのが、とっても楽しみだ。

桜が咲くと何だかウキウキしてくる。あまりにもウキウキし過ぎて、がらにも無く花柄のマキシ丈ワンピを買っちゃった。

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春というより夏気分? (´ε`;)
 

tulip覚書

◆ダーウィンのラン

“ダーウィンのラン”、正式な名前はアングレクム・セスキペダレといい、マダガスカルに生育している。花には距と呼ばれる、花弁(唇弁)の基部がチューブ状に長く伸びた、最長で40センチほどにもなる器官があり、この先端に蜜を蓄えている。この蜜を吸うためには、ストロー状の長い口がなければならず、ダーウィンはこのランを発見したときに、この長い距と同じくらい長い口吻を持つ昆虫がいると予想していた。

そしてこの予想は数年後に的中し、この花の蜜を吸いに来る、とてつもなく長い口吻を持つスズメガの一種が発見されたのである。このスズメガの口吻の長さが距と同じか、やや短いときにこのランの花粉がスズメガの顔につき、次の花で蜜を吸うときに、花粉が別の花の雌しべにつき、受粉が成立するしくみである。

Angraecum_sesquipedale

◆“究極の青い花”

Meconopsis_horridula 世界の花の中で、青い空にもっとも近い花の色を持つ植物は何かと問われれば、私は迷わず、“ヒマラヤの青いケシ”と呼ばれるメコノプシスだと答える。メコノプシスは主に、ヒマラヤ山脈の標高3000から5000メートル、また種によっては6000メートル近くまでの高山帯を中心に分布しているケシ科の植物で、約50種が含まれる。

花の色としては白、黄、赤、紫そして青と、実に多彩であるが、多いのはやはり紫から青の花をつける種類ではなかろうか。中でも、ネパールから中国にかけて広く分布するメコノプシス・ホリデュラがもっとも青空に近い花の色であろう。私はこの花を“究極の青い花”だと思っている。

◆遅咲きの花

Photo 日本で、花が咲くまでに長い年月のかかる植物のひとつといえば、タケの仲間をあげることができる。「雨後のたけのこ」といわれるように、タケ類は芽が出てからあっという間に大きくなる。しかし、大きくなるのは速くても、成熟、すなわち花が咲くようになるまでには極めて長い時間を要する。タケ類は熱帯から日本のような温帯に至るまで、数多くの種が知られているが、その多くは花が咲くまでに40年から120年かかるといわれている。

タケ類は一回開花結実すると枯死してしまう。このような植物のことを、一回結実性植物あるいは一稔性植物と呼んでいる。

タケやリュウゼツランの仲間が開花するまでにもっとも長い時間を要する植物なのかというと、これらを上回る植物が存在する。それがプヤ・ライモンディーだ。この植物は南米のペルーとボリビアのアンデス山脈の半砂漠地帯に生育するパイナップル科の植物である。無数の緑がかった白い花を一週間から一か月ほどつけた後、やはりタケやリュウゼツランと同様に枯死する。

このプヤ・ライモンディーは芽生えてから開花するまでに、最短でも80年、最長では150年もの極めて長い時間を必要とする。これまでに知られている限り、地球上の顕花植物の中でもっとも遅咲きの花である。

Puya_raimondii

◆開花のスイッチ

“花が咲く”という現象を日本で語る場合には、それぞれの花のはっきりとした季節性を中心に述べることになろう。日本には春夏秋冬があり、それぞれの季節にそれぞれの季節の花が咲く。

たとえば、室内園芸として需要の多いポインセチアはクリスマスのころに苞葉(ひとつの花ではがく片に相当する部分)を真っ赤に染めるし、またケイトウやハゲイトウは秋の夕陽にも勝るとも劣らない、燃えるような赤い穂状の花序をつける。一方、ハナショウブは梅雨の真っ只中にうっとうしさを吹き飛ばすようなすがすがしい紫色の花を咲かせ、サクラソウはまさに春爛漫のころに開花する。

しかし同一の種では基本的に、花の咲く時期は変わらないのが普通である。春に咲く花は多少のずれはあっても春に咲くし、秋に咲くものは秋に咲くのだ。つまり、何らかの「開花のスイッチ」が存在すると考えられる。一般的には、植物が一日に日の光を浴びる時間の長さが重要な開花のスイッチとなる。

植物の芽には将来、葉になるもの(葉芽)と花になるもの(花芽)とがあり、花芽については、一定の時間以上に光を浴びると花芽をつけるものと、逆に一定の時間以下の日照で花芽をつけるものとがある。前者を長日植物、そして後者を短日植物と呼んでいる。

植物の種類によって異なるが、長日植物は一日におおよそ10時間以上日の光を浴びると花芽をつけるといわれている。一方、短日植物は昼の長さが10時間以下になると花芽をつける。

日本では、三月の春分の日から九月の秋分の日までは昼が長く、逆に秋分の日から春分の日までは夜が長いので、おのずと長日植物は春から夏にかけて咲く花、短日植物は秋から冬にかけて咲く花であることが一般的である。前者ではフヨウ、ヤグルマギク、ハナショウブ、グラジオラスなどが、後者ではサルビア、キク、コスモス、ポインセチアなどがその代表である。花芽ができるかどうかは、昼の長さの長短によって決定されるが、一旦花芽ができてさえしまえば、開花には光の当たる時間が長くても短くても関係がない。

Dvc00005_2 これらとは別に、昼の長さにはまったく関係がなく花芽をつける植物もある。チューリップ、スイセン、アジサイ、バラ、シクラメンなどがそれである。その中でチューリップは温度によってその開花が大きく左右される代表的な植物である。チューリップは春に花が咲き、初夏にはすでに地上部は枯れて、地下部の球根だけになる。球根に、来春花を咲かせることができるほど十分に栄養が貯蔵されていれば、このときに来春に咲くはずの花芽はすでに作られているので、必要な温度さえあればいつでも開花するのだ。

Photo_4 また、ハクサイやキャベツのようなアブラナ科の植物は、春になっても畑に植えっぱなしにしておくと、葉を突き破って花芽があがる。これがいわゆる、“薹が立つ”という現象である。この現象は植物が冬の低温刺激によって花芽をつけることであり、これもまた一種の温度がスイッチとなる例といえよう。植物が低温によって花芽をつけることを“春化”あるいは、“バーナリゼーション”と呼んでいる。

Bougainvillea_glabra 日本のような温帯では、開花のスイッチが日照時間や温度の違いで入るのに対して、熱帯や乾燥地などでは年間を通して日照時間や温度があまり変わらないために、開花も含めた植物の成長は湿度、すなわち乾季か雨季かが大きな要因として加わる。これまでにわかっている植物として、ブーゲンビレアがあげられる。この植物は水分が多いとあまり花が咲かず、水分を控えると(自然の状態では乾季にあたる)、よく花をつけることが知られている。

◆“狂い咲き”

本来春に咲くべき花が秋に開花する場合がまれにある。これを“狂い咲き”と呼んでいる。狂い咲きは元来、季節を外れた現象なので、よく新聞やテレビでニュースとして扱われる。そして、それらの現象は最近、地球の温暖化のせいだとよくいわれる。

01 実際、狂い咲きはどうして起こるのだろうか。さくらなどでは花芽はすでに夏には作られているのだが、冬に向かうと冬越しのために休眠の準備に入る。夏から秋になって日照時間が短くなると、アブシシン酸という植物ホルモンが葉から供給され、それによって花芽は成長を抑えられるのだ。このアブシシン酸が冬の間に徐々に減少し、春になって日照時間が長くなると、今度はジベレリンという成長を促進させる植物ホルモンが供給され、開花するしくみだ。

しかし、狂い咲きが起こる場合には、花芽が作られた後に台風などで葉が落ちてしまったりしたために葉からのアブシシン酸の供給がなくなり、花芽の休眠が行なわれないで成長してしまうため、季節はずれに開花してしまうといわれている。

私たちの筑波実験植物園では、園内の植物を対象として開花した時期を調査している。わずか5年間のデータではあるが、秋に咲く植物よりも春に咲く植物のほうが、開花が年々早まっている傾向のあることを認めている。

これは、春の花では、冬の気温によって花芽の分化が左右される、つまり気温が高いと開花が早まるものが多かったり、あるいは前年にすでに花芽が作られている場合も、冬の気温が高いとその開花が早まってしまうものが多いのに対して、秋の花は日照時間によって花芽の分化が左右されるものが多く、多少の気温の上昇はあまり開花に影響しないからだと思われる。

◆江戸系 肥後系 伊勢系

日本の園芸植物の中で、選抜育種を基本にして改良が行なわれた代表的な植物のひとつがハナショウブである。選抜育種とは、遺伝的に変異を持つ集団の中から品種改良の目標にかなった形質を持つ個体を選んで、新しい品種を作出する方法だ。品種改良のもっとも初期の段階である。

この方法によってハナショウブは、日本に自生しているノハナショウブというたった一種類の野生種から多数の園芸品種が作出された。ノハナショウブは日本各地に分布しているが、自生地でよく花を観察してみると、地域ごとに、あるいは集団ごとに、若干、花の色の変異が見られることがある。一般的には赤紫色であるが、ピンクから紫、時に白色のものも散見される。

当初は野生集団における変異株を選抜して改良が進められた。そしてさらに、江戸時代には特に、江戸、肥後そして伊勢を中心にそれぞれの気風を活かしての改良が行なわれた。

たとえば江戸系では、庭園栽培用として風雨にも耐えられるように茎が太く改良され、また当時大輪咲きの作出が可能であったにもかかわらず、江戸っ子気分を表現する中輪咲きのものが多く作出されている。それに対して肥後系では、特に武家社会で改良が進められ、また室内で観賞することを目的に作出されたために、武家の精神を表現するような一本立ちで、花は大輪のものがもてはやされたという。伊勢系もまた、伊勢松坂で、武家社会を中心に改良が進められたが、草丈がやや低く、鉢で栽培することを主眼としていたようである。

今日の近代的な品種では、これらの垣根が取り払われ、より自由な改良が進められつつある。だがハナショウブの場合、いずれにしてもノハナショウブ一種から作出され、種内間での交配のみで改良されているので、その変化の幅は比較的限られている。その範囲内でこれまでに約2000もの品種が成立したことは驚くべきことである。

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◆黄色コスモス

選抜育種によって画期的な品種が作出された別の例がコスモスである。コスモスというと、おそらくたいていの方が秋に咲く薄紅色の可憐な花を思い浮かべるだろう。これまでコスモスの花色は本来の薄紅色に加えて白色が一般的であり、黄色の品種は存在しなかった。黄色の花を咲かせるコスモスとしては、日本でもよく栽培され、そして時に野生化しているキバナコスモスがある。しかし、同じ属ではあるが、キバナコスモスはコスモスとは別の種だ。

キバナコスモス: 黄色、またはオレンジの花を咲かせる。コスモスの名を冠するが、“コスモス”とは同属別種にあたり互いを交配する事は出来ない。原産地はメキシコで、標高1600m以下の地域に自生する。18世紀末にスペイン・マドリードの植物園に送られ、ヨーロッパに渡来した。日本には大正時代の初めに輸入された記録が残っている。

黄色コスモスの育成に成功したのは、当時、玉川大学農学部の教授であった佐俣淑彦博士だ。博士は花弁の一部が黄色い変異体を紅色品種の中から発見した。それを自家受粉させ、その後代から、より黄色味の強い固体を選抜してまた自家受粉を行う。これを反復して行うことにより、花弁全体が黄色いコスモスの育種に成功したのだ。

博士が育種を開始したのが1957年で、世界初の黄色コスモスが品種「イエローガーデン」として登録されたのが1987年であったので、ひとつの品種の成立に何と足掛け30年の月日を要したのだ。ただ、前にも述べたようにコスモスは短日植物なので、開花調整を行うことによって、春と秋の2回、開花させることができた。それによって本来は60年もの長い年月が必要だった交配をその半分で行うことができたのは幸いだった。しかしながら、佐俣博士はこの品種登録を目にすることなく1984年に他界された。

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◆遺伝子組み換えによる青バラの誕生

本来、類縁関係がまったくないような植物同士の間での交配は不可能で、雑種が得られるようなことはない。極端な例でいえば、ランとキクの雑種などは絶対にあり得ないのだ。ところが近年、遺伝子組み換えという画期的な技術が開発された。

006101bjpg遺伝子組み換えとは、ある植物から特定の遺伝子を取り出し、それを別の植物に組み入れることである。ある育種の目標となる形質を持つ植物から、その形質が存在しているDNAの部分だけを、制限酵素と呼ばれる酵素を用いて特異的に切り取り、それをアグロバクテリウムという菌の遺伝子に導入し、その菌を遺伝子を導入しようとする植物に感染させて、有用な遺伝子をこれを導入したい植物のDNAに組み入れるなど、いくつかの方法が知られている。

サントリー先進コア技術研究所の田中良和博士らのグループは、この遺伝子組み換えの技術を応用して、世界で初めてデルフィニジンによって花の色が発現するバラの作出に2004年に成功した。(右画像)

 
「奇跡」のブルー・ローズへの挑戦

「青いバラ」はオールド・ローズの「カーディナル・ド・リシュリュー」などが「青のバラ」として知られていた。しかし、純粋な青さを湛えたバラを作り出すことは世界中の育種家の夢であり、各国で品種改良競争が行われた。1957年アメリカのフィッシャーが「スターリング・シルバー」を出し、「青バラ」の決定版といわれた。しかし、競争はやまず、1957年にはタンタウが一層青い「ブルームーン」を発表。それにコルデスが「ケルナーカーニバル」を出し、フランスのメイアンは「シャルル・ドゴール」を発表と熾烈な品種改良競争を展開。日本でも、青いバラに対する挑戦は盛んで、今日までに数多くの品種が生み出され、世界でも注目を浴びている。

2008年現在、一般的な交配による品種改良で最も青に近いとされる品種は、岐阜県の河本バラ園が2002年に発表した「ブルーヘブン」、アマチュア育成家である小林森治が1992年に発表した「青龍」や2006年に発表した「ターンブルー」等が挙げられる。

従来、青い色素をもつ原種バラは発見されていなかったため、従来の原種を元にした交配育種法では青バラ作出は不可能とされてきた。そのため現在の園芸品種にも青色といえる品種は存在しない。また「青バラ」と呼ばれる品種は、主に赤バラから赤い色素を抜くという手法で、紫や藤色に近づけようとしたものである。しかし最近、サントリーの福井祐子らの研究により、青い色素を持たないとされてきたバラから、バラ独自の青い色素が発見された(「青龍」を始めとするいくつかの青バラより)。これはバラ独自のもののため、「ロザシアニン」(Rosacyanin)と命名された。

この色素を持つ「青龍」は花粉をほとんど出さない為に交配親としては不向きとされており、遺伝子操作に頼らない青バラへの道は依然険しく長い道のりのままではある。だが、「ロザシアニン」の発見は純粋な青バラ作出を目指す育種家にとって一つの希望を示したといえる。

サントリーフラワーズの遺伝子改良により誕生した「青いバラ」は、青いバラ (サントリーフラワーズ)の項を参照。

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コメント

植物って不思議だね
遺伝子組換えっていろいろ発展(?)
させられそう
だから神の領域を侵す危惧があるんだね

ワンピースの絵カワイイ
ステキ^^

投稿: nono1 | 2010年4月 4日 (日) 08時08分

ほんとに不思議で面白い。

遺伝子操作の発達は、紙一重だと思う。

どうコーディネイトしていいのか???だったので、
店頭ディスプレイやネットで情報収集して
イメージをイラストにしてみたの。 ^^

投稿: さくらスイッチ | 2010年4月 4日 (日) 19時30分

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