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2010年1月11日 (月)

160『床下の小人たち』 メアリー・ノートン 初版1956年

イギリスの古風な家の床下に住む小人の一家
生活に必要なものはすべて
こっそり人間から借りて暮らしていましたが
ある日
小人の少女がその家の男の子に見られてしまいます

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pouch原題

The Borrowers (UK 1953)

pouch概要

ポッド、ホミリー、ちいさなアリエッティのクロック一家は小人の3人家族。床下に住居を構え、「人間(ニンゲン)」から食べ物や生活用品を「借り て」暮らしている。マッチ箱で作ったタンス、郵便切手の絵画…。頭をはたらかせ、日常のなにげないものをリサイクルして使う「借り暮らし」の様子は読んで いて本当に楽しい。

しかし長い間続いた「借り暮らし」生活も、古風な家に1人の男の子がやってきたことから一変する。好奇心旺盛なアリエッティはその男の子に姿を見られるという、もっとも致命的なミスを犯してしまう。

pouch読むきっかけ&目的&感想

2010年夏公開予定のジブリ映画『借りぐらしのアリエッティ』の原作だという事で知ったファンタジー小説。映画は宮崎駿の企画・脚本だから、原作とかなり違った展開になっているのは間違いない。おまけに、原作はイギリスが舞台だけど、映画は日本が舞台らしいから、細かいディテールも違ってくるだろう。・・・・・という分けで、映画を気にする事なく、「原作」を先に読んでみる気になった。

さくら好み ★★★★★

pouch覚書

クロック一家は、ポッド、ホミリー、ちいさなアリエッティの小人(身長15cm)の3人家族。かれらの事を少女ケイトに語るのは、お話し上手なメイおばさん。  

◆「いったい、どこへいっちゃうんでしょう?

「編み棒をなくしたの。おいたところは、わかっているんだけど、」と口早に、ケイトはことばをつづけました。「どこもかしこも見たのに。だって、毛糸はちゃんとあるのよ。ちゃんと、おいたところに。」

「おやまあ、」と、メイおばさんがかるく声をたてました。「まさか、このうちにもいるんじゃないだろうね!」

「なにが?」と、ケイトがききました。

「借り暮らしの人たちがさ。」メイおばさんは、そういって、うすあかりのなかで、かすかにわらったようでした。

ケイトは、すこしこわそうにして、目をみはりました。そして、ちょっと間をおいてききました。「そんなもの、いるのかしら?」

「どんなもの?」

「どんなって、人間でしょ? ちがう人間、うちのなかに住んでいて・・・・・いろんなものを、借りていく・・・・・」

メイおばさんは、仕事の手をとめてききかえしました。「あなたは、どう思うの?」

「わからないわ。」と、ケイトは、くつのボタンをつよくひっぱりながら、いいました。「いるはずないと思うけど、」――ケイトは顔をあげました――「だけど、ときどき、きっといると思うことがあるの。」

「どうして、そうお思いだい?」と、メイおばさんがききました。

「だって、いろんなものがなくなるんですもの。たとえば、安全ピンね。工場では、どんどん安全ピンをつくっているでしょ。そして、みんな、毎日のように安全ピンを買ってるわ。それなのに、どういうわけだか、さあいるというときには、一つだってないんですもん。いったい、どこに、みんなあるんでしょう? いま、こうしているとき、どこへいっちゃうんでしょう? 」

◆すてきな暖炉

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アリエッティ(小人・14歳)は、炎をたやさないように気をつけながら、からしさじをかたむけて、ほんのいくつぶか、つぎたしました。そして、立ったまま、火にあたっていました。

それは、すてきな暖炉でした。アリエッティのおじいさんが、古いりんごしぼりについていた歯車を、馬小屋からもってきて、つくったものです。歯が、外がわに星型につきだしていて、火の燃えるところは、まんなかでした。暖炉のうえには、ちいさなシンチュウのじょうごが、さかさにつけてあって、煙のすいこみになっていました。このじょうごは、まえには、昔、上の広間の机のうえにおいてあった、これとそろいの石油ランプについていたものです。じょうごの口には、管がつづいていて、それで、煙は、上の台所の煙だしへいくようになっていました。

火をおこすのには、マッチのじくをたきぎにして、それに、こまかいつぶの石炭をくべるのですが、それが燃えあがると、まわりの鉄が熱くなります。すると、ホミリー(母親)が、キャップ状の銀のゆびぬきのなかへスープを入れて、歯の上であたためたり、アリエッティが、クルミをやいたりするのです。冬の夜などは、なんともいえないほど、気もちのいいものでした。

◆「妖精なんて信じない。」

男の子(人間・9歳)はいきかけましたが、きゅうにふりかえると、また、アリエッティのところへもどってきました。しばらく、もじもじして立っていましたが、やがて、いいました。「きみ、飛べる?」

「飛べないわ。」アリエッティは、びっくりしてこたえました。「あなた、飛べるの?」

男の子は、まえより、もっと赤い顔をしました。「飛べるもんか!」と、おこったようにいいました。「妖精じゃないもん!」

「あら、わたしだって、ちがうわ。」と、アリエッティがいいました。「だれだって、妖精じゃないわ。わたし、妖精なんて信じない。」

男の子は、アリエッティをふしぎそうに見ました。「妖精を信じないって?」

「ええ。」と、アリエッティがいいました。「あなたは、信じて?」

「信じやしないさ!」

ほんとに、おこりっぽいたちの男の子だ、とアリエッティは思いました。「わたしのおかあさんは信じているのよ。」と、アリエッティは、なぐさめ顔にいいました。

◆ボートでスープなべのなかをこぎまわる

「きみ、スープのまないの?」と、男の子がききました。

「もちろん、のむわ。」と、アリエッティがわらいました。「わたしのおとうさんにおじいさんがあって、そのおじいさんがちいさなボートをもってたのね。そのボートで、スープなべのなかをこぎまわって、浮いているものをひろってたのよ。おじさんは、おいしいずいのかけらをとるのに、底釣りもしていて、とうとう料理番が、スープのなかにまがった釣り針があったもんで、あやしんだっていうわ。いちどなんか、大きなだしの骨がスープにかくれてたのに乗りあげて、難破しそうになったのよ。オールはなくしちゃうし、舟はもりはじめるし、でも、釣り糸を、おなべの柄にん投げかけて、それにつかまって、やっとふちからあがれたって話よ。だけど、そのスープったら――いくひろもふかくて! それに、おなべの大きさ! つまりね、みんなにゆきわたるだけのたべものは、すぐ、世界じゅうになくなっちゃうだろう、っていうことなの! だから、おとうさんがいうのよ、あの連中が死にたえていくのは、いいことだって・・・・・。ほんのすこしいれば、っておとうさんがいうのね、それでじゅうぶんだって――わたしたちを養うのによ。さもないと、なにもかも、」――アリエッティは、おとうさんのことばを思いだそうとして、口ごもりました――「ばかでかくなっちゃうんですって――」

「あのね、」と、男の子がききました。「《わたしたちを養う》って、どういうこと?」

◆「借りる、」

男の子は、考えにふけりながら、腰をおろして、草の葉をかみました。「借りる、」と、しばらくして、いいました。「きみは、そういうんだね?」

「ほかに、なんていえばいいの?」と、アリエッティがききました。

「ぼくなら、盗む、っていうね。」

アリエッティはわらいました。ほんきでわらいました。「だって、わたしたち、借り暮らしやなんですもん。」といって説明しました。「ちょうど、あなたが――人間、とか、なんとかいうのとおんなじよ。わたしたち、家の一部だわ。わたしたちのすることを、盗むっていうんだったら、暖炉が、石炭入れから石炭を盗むっていってもいいことになるわ。」

◆「人間ってものは、借り暮らしやのためにあるのよ」

「だけど、借り暮らしやは、盗みはしないわ。」

「人間からでなけりゃね。」と、男の子がいいました。

アリエッティは、わらいくずれました。あんまりひどくわらったので、さくら草のかげに、顔をかくさなければならないほどでした。「なんて、まあ、おかしな人ね!」と、アリエッティは、涙をだして、はあはあしながら、いいました。そして、ふしぎそうにしている男の子の顔を見あげました。「人間ってものは、借り暮らしやのためにあるのよ――パンが、バターのためっていうのと、おんなじよ!」

pouch著者

4795 メアリー・ノートン(1903年12月10日- 1992年8月29日)は、イギリスの作家、ロンドン生まれ。はじめは演劇を志して、何年か舞台に立ったが、結婚後は、海運業を営む夫と共に、ポルトガルに住んだ。その後、事業の不振などにより、アメリカへ渡り、4人の子どもをかかえながら働く。1943年、戦争中のロンドンにもどり、以後、演劇活動のかたわら、文筆をふるった。

『床下の小人たち』は、カーネギー賞、ルイス・キャロル・シェルフ賞、アメリカ図書館協会賞を受賞した名作である。

小人の冒険シリーズ 〔全5冊〕 ・床下の小人たち ・野に出た小人たち ・川をくだる小人たち ・空をとぶ小人たち ・小人たちの新しい家

 

pouchおまけ

Actionphp_2 2009/12/17 ジブリ汗まみれ号外!
「借りぐらしのアリエッティ」製作発表記者懇談会!

↑これを聞いて『床下の小人たち』を読んでみたくなった。

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コメント

今度図書館で探してみよーかな

book
いま エクトール・マロ作の
「家なき娘」を少しずつ読んでる
かわいそうでなかなか先に進めないから(^^;

投稿: nono1 | 2010年1月15日 (金) 06時30分

小人から見た世界観が興味深かったよ。
自由と変革を求めて行動するアリエッティのキャラも良かった。

「家なき“娘”」があるんだね。
知らなかったよ。
面白そう。 confident

投稿: さくらスイッチ | 2010年1月15日 (金) 20時16分

初めまして、
ジブリで映画が放映されるのを
楽しみにしています。

またお邪魔します。

投稿: 書籍の感想とレビュー■まあ | 2010年5月 6日 (木) 01時52分

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