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2009年12月 8日 (火)

147『気骨の判決―東條英機と闘った裁判官』 清永聡 初版2008年

「私は、この判決をするにも
いささかの政治理念には左右されなかった。
もし、判決が時の政治理念を支えてなされたとするならば、
その判決は不純であり、死んでいると考える」

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libra概要

吉田久、命がけで東條英機と闘った裁判官―。政府に非協力的な国会議員を排除する意図があったとされる「翼賛選挙」では、聖戦遂行の美名の下、国民の投票の自由を実質的に奪う露骨な選挙妨害が行われた。他の選挙無効の訴えが退けられる中、吉田は特高の監視や政府からの圧力に負けず、戦時中に唯一の「選挙無効」判決を下す。

libra読むきっかけ&目的&感想

今年の夏に放映されたNHKスペシャルドラマの原案本が本書になる。わたしはこのドラマを見ていないけど評判が良かったようで、それがネットで記事になっているのを読み、本書の存在を知った。それでアマゾンであらすじを読んでみたら面白そうだったので、いつか読もうとチェックしていた。

さくら好み ★★★☆☆

1945年(昭和20年)の3月に、1942年の鹿児島2区の衆議院選挙――国を挙げて戦争を遂行するためという理由で、事実上国が候補者を推薦する形で行われた――を無効とするって、かなり勇気のいることだ。政治家も裁判官も保身に走って軍部に阿ってしまったこの時期、まさに命がけの証人尋問であり判決だ。

「職業倫理」というものも改めて考えた。

libra覚書

吉田久

Yoshidahisashi 吉田久(よしだひさし 1884年8月21日生まれ)福井県出身。裁判官

昭和17年の衆議院選挙をめぐり、当時の鹿児島2区の選挙は無効だと判断し、司法の独立を守った判決を下した。判決の原本は空襲の際に焼失したとされ、判例集にも掲載されなかったことで「幻の判決文」となっていたが、61年ぶりに最高裁判所の倉庫で発見された。

当時の選挙は、国を挙げて戦争を遂行するためという理由で、事実上国が候補者を推薦する形で行われ「翼賛選挙」と呼ばれた。推薦されなかった候補には投票しないよう呼びかけるなど、さまざまな妨害が加えられた。この選挙について、大審院(現在の最高裁)の裁判長であった吉田久は昭和20年3月「自由で公正な選挙ではなく、無効だ」として選挙のやり直しを命じるとともに「翼賛選挙は憲法上大いに疑問がある」と指摘して国を厳しく批判し、画期的な判決といわれた。

2008年9月、これまでほとんど知られる事のなかったこの判決と孤高の裁判官の生涯を追った『気骨の判決』清水聡著が出版された。

「わたしは、死んでもいい。
裁判官が事件の調べに行って 殺されるのは、
あたかも軍人が戦争に臨んで
弾に当たって死ぬと 同じことだ。
悔ゆることはない」


翼賛選挙無効判決

1942年(昭和17年)に行われた第21回衆議院議員総選挙(翼賛選挙)をめぐって提起されていた選挙無効訴訟(鹿児島2区選挙無効事件)において1945年(昭和20年)3月1日、大審院第三民事部の部長判事(裁判長)だった吉田は「鹿児島2区の選挙は無効」とする判決を下した。同事件の審理に際して吉田は4人の陪席裁判官と共に鹿児島へ出張し187人もの証人を尋問しており、この出張尋問は大審院内部でも「壮挙」と評された。

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