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2009年10月12日 (月)

132『魔女の1ダース ~正義と常識に冷や水を浴びせる13章~』 米原万里 初版1996年

世間一般の常識では 1ダースの鉛筆は12本だが 魔女の世界では13本

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door概要

異文化が馴染みの世界に風穴をあける!生真面目の骨頂とシモネタの間を乱高下するジェットコースター・エッセー。「世間一般の常識では、1ダースの鉛筆は12本だが、魔女の世界では13本」。見慣れた風景の中に異分子が混じることで、見えなかったものが見えてくる。常日頃、当然視している正義や常識に冷や水を浴びせるエッセイ集。

door読むきっかけ&目的&感想

以前、ロシア情報収集・分析のエキスパートとして活躍した元外交官の佐藤優の著書『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』と『自壊する帝国』を読み、ネットでちょこちょこ彼についての情報を読んでいた時に、ロシア語通訳第一人者である米原万里のことを知った。最近なにかのきっかけで、佐藤優と米原万里の古い対談記事を読み彼女に好感を持ったので、アマゾンで著作を検索してみた。その中で、評価が高く、気楽に読めそうで、何だか面白そうなタイトルの本書を読んでみる気になった。

さくら好み ★★★☆☆

面白かったけど、思ったより面白くなかった。これは、事前の期待値を上げ過ぎてしまったから、それとの相対的な感想に過ぎない。本書にある「評価の方程式」の記述は正しい。(笑)

本書にちょっと登場した須藤敏夫(仮名)さんは、佐藤優のことだね。「弱みとは、その人間が弱みと思い込んだ時点から弱みとなる」、という彼の言葉に納得。

ジェフリー・サックスの「処方箋」をかなり辛辣に批判していた。「その視野の狭さ、傲慢な押しつけがましさ、無知ゆえの自信過剰と独りよがり、異なる文化や歴史的背景に対する信じがたいほどの想像力の欠如というのは、はた迷惑も甚だしい」、と書いていた。本書の流れの中で読むと、彼女の意見に納得できる。わたしは以前彼の著書『貧困の終焉』を読んでいるので、この項は特に興味深かった。

プロローグにある『悪魔と魔女の辞典』、読んでみたいな。

黒い革表紙に金色の文字が彫ってあり、『悪魔と魔女の辞典』とある。パラパラとめくってみると、

愛 ― 相手から無料で利益を引き出すのに、相手が対価以上のものをこちらから獲得したと錯覚し、トクしたと思わせるための呪文の一種。ただし、呪文を唱える当人のほうが錯覚し、自分のほうが損をしていると思い込む場合も多い。「無償の愛」などとわざわざ定語をつけたりすることがあるように、本来は有償なものと考えられている。

希望 ― 絶望を味わうための必需品

思いやり ― 弱者に対しては示さず、強者に対して示す恭順の印

謙遜 ― 自慢したいことを他人に言わせるための一種の方法

などなど「まっとうな」世界ではプラスイメージにつながる概念が、マイナスイメージに、マイナスイメージにつながる概念はプラスイメージにことごとく逆転するパターンになっているのだ。

米原万里による『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』と『オリガ・モリソヴナの反語法』と『打ちのめされるようなすごい本』は、いずれ読みたいと思う。

door覚書

プロローグ
第1章  文化の差異は価値を生む
第2章  言葉が先か概念が先か
第3章  言葉の呪縛力
第4章  人類共通の価値
第5章  天動説の盲点
第6章  評価の方程式
第7章  ○○のひとつ覚え
第8章  美味という名の偏見
第9章  悲劇が喜劇に転じる瞬間
第10章  遠いほど近くなる
第11章  悪女の深情け
第12章  人間が残酷になるとき
第13章  強みは弱みともなる
エピローグ

door著者

米原 万里(よねはら まり、露: Мари Йонэхара、1950年4月29日 - 2006年5月25日)

元ロシア語会議通訳、作家。59~64年、在プラハ・ソビエト学校に学ぶ。東京外国語大学ロシア語科卒業、東京大学大学院露語露文学修 士課程修了。80年設立のロシア語通訳協会の初代事務局長を務め、95~97年、03~06年会長。92年、報道の速報性に貢献したとして、日本女性放送 者懇談会賞を受賞した。

著書『不実な美女か貞淑な醜女か』(徳間書店、新潮文庫)で読売文学賞、『魔女の1ダース』(読売新聞社、新潮文庫)で講談社エッ セイ賞、『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(角川書店、角川文庫)で大宅壮一ノンフィクション賞、『オリガ・モリソヴナの反語法』(集英社、集英社文庫) でBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。

卵巣癌を患い除去したが1年4ヶ月で再発、2006年5月25日に鎌倉の自宅で死去。

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