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2009年5月24日 (日)

094『食品汚染はなにが危ないのか ニュースを読み解く消費者の科学』 中西貴之+藤本ひろみ 初版2009年

食の「安全」vs「安心」

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restaurant概要

食品にまつわるニュースが連日報道される昨今、消費者の食の安全に対する意識がとても高まっています。けれど、こう連日さまざまな情報が矢継ぎ早に出され飛び交っていては、多くの人にはついていくことすらままなりません。この本では、食の安全性を読み解く上で必要不可欠な知識をピックアップし、ふつうの消費者がいまいち理解しきれていない部分にフォーカスを当てながら、その知識を科学的に考察しつつ、 これまで以上にたくさんのイラストを交えわかりやすく解説しました。

ただ「食品添加物を食べないようにするにはどうすればよいか」とか「無農薬野菜を作る方法」とか「どんな食品が危険なのか」とか、そういう本ではありません。

40パーセントを切った食糧自給率や、景気の悪化によって安い食品を選ばざるを得ない日本の普通の消費者の現状をふまえ、食卓にある程度の食品添加物や、農薬を使った経歴のある野菜が出てくるのはやむを得ないことと考えるスタンスに立って書いています。

そんな中で、少しでも健康な食生活を送るにはどうすればよいか、リスクを少しでも減らすには何に気を つければよいか、非科学的で過剰な報道に踊らされないようにするにはどのような知識があればよいか、そんなことを書いてみました。キーワードは食品汚染リ スクに対する「定性的評価」と「定量的評価」です。まぐろぐヴォイニッチ

restaurant読むきっかけ&目的&感想

ヴォイニッチの科学書」というポッドキャストが好きで、あたしはかかさず聞いている。本書は、このポッドキャストをやっている中西貴之さん(現役の科学者)が書いている。題材が面白そうだったので借りてみた。

さくら好み ★★★★☆

「国産ウナギと中国産ウナギを科学で見分ける」、「遺伝子組み換え食品はみんなすでにたくさん食べてるし」、「クローン食品ってなに」、「BSEの最新科学と問題点」、「10日以内に消えますように・・・・・ ポストハーベスト農薬」など等、あたしが感覚的にしか捉えていない事を図解入りで非常に分かり易く書いてあった。あたしが食品を選ぶ時の基準を広げてくれた。ヽ(´▽`)/

restaurant覚書

残留農薬等に関するポジティブリスト制度 wiki

◆食品の残留農薬

スーパーで“無農薬野菜”が大々的にPRされているのを見るとなんだか無農薬栽培以外の野菜は農薬まみれのように思えてしまいますが、決してそうではなく、農薬が付着したままの野菜が市場に流通することはほとんどないようです。

厚生労働省が2006年に発表した資料によると、地方公共団体、検疫所及び地方衛生研究所等が実施した農薬の分析結果では、約91万件の検査数に対し残留が許されている範囲内の農薬が検出された例は、国産品で0.44%、輸入品で0.34%でした。99.5%の野菜は、たとえ栽培に農薬が使われていたとしても、店頭に並ぶときには無農薬野菜と同じものになっているということになります。また、国産品と輸入品で農薬が検出された割合がほぼ同じだということを考えると、国産品ならば特に安全とか、輸入品は危険とかいうわけでもなさそうです。

なお基準値を超えた数は国産品で0.02%、輸入品で0.03%と報告されています。ただし、基準値自体が何らかの影響がわずかにでも出る残留量のさらに100分の1などに設定されていますので、基準値を数百倍も超えていない限り健康上何ら問題はないことになります。

◆インフルエンザ

インフルエンザウイルスは、A型、B型、C型の3種類にわかれます。人間には3種類全てが感染可能ですが、鳥に感染できるのはA型だけです。

A型のウイルスは、ウイルスの性質を決める重要な役目を担う2種類のタンパク質「ヘマグルチニン(略称:H)」と「ノイラミニダーゼ(略称:N)」がどのような形かによって更に細分化できます。ヘマグルチニンは16種類、ノイラミニダーゼは9種類あって、それらの組み合わせによって異なる性質を持つウイルスになります。

パンデミックが恐れられている「H5N1」型は、ヘマグルチニンの5番とノイラミニダーゼの1番を持っているA型ウイルスということになります。

HとNの組み合わせによって毒性が変化し、ほとんどのタイプは死に至るような重篤な症状は出ませんが、ヘマグルチニンの5番または7番を持つ鳥インフルエンザウイルス、つまりH5型、H7型の中には例外的に非常に強い病原性を持つものが存在し、それらを「高病理性インフルエンザ(HPAI)」と呼びます。

◆中国食品 ダメ? 優秀?

2008年8月に厚生労働省医薬食品局食品安全部が発表した「平成19年度輸入食品監視指導計画に基づく監視指導結果及び平成19年次・平成19年度輸入食品監視統計の公表について」という長いタイトルの書類には、輸入食品の食品衛生法違反に関する統計がまとめられています。違反の内容は、魚介類の天然毒素、運搬中のカビの発生や腐敗、残留農薬の基準超過、指定外添加物などの食品汚染に関わるものの他、書類の不備や容器の規格などに関する違反も含まれています。

国(地域を含む)別の違反状況をみると、中国は409件(33.4%)で違反全体の約3分の1が中国によるものでした。次いでベトナムの150件(12.3%)、米国の126件(10.3%)、タイ106件(8.7%)、エクアドル60件(4.7%)の順となっています。これをみて皆さんどう思われたでしょうか? 「あぁ、やっぱり中国の食品は危険なんだ」と感じたでしょうか?

さらに生産・製造国別の届出・検査・違反状況について、詳細に見てみると中国は検査件数96784件に対して違反件数は409件で、その割合は0.42%、中国と並ぶ食糧輸入国である米国の場合は検査件数19475件に対して違反件数は126件で、割合は0.65%となります。この計算結果は、スーパーの店頭に米国産と中国産が並んで売られている場合、中国産を買ったほうが安全だということを意味しています。

「いや、米国の食品だってもともと信用してないし・・・」といわれる方もおられるかもしれませんが、日本が年間10万t以上の食料を輸入している23の国と地域について調べてみると、シンガポールやデンマークのように20万t以上を日本に輸出しながら年間の違反が0件または1件のみという優等生国家もありますが、全体の中では中国もトップクラスの優等生であるといえます。

逆に話題には上がりませんが、年間7万tも日本に輸出しながら違反率が25%、つまり届いた物の4分の1が食品の基準を満たさないという親日国家エクアドルはいったいどうしちゃったのかな・・・・・と思います。日本人の評価が高いと思われるオーストラリア産食品は、年間230万tの食糧輸入で違反率が1.0%もあり、意外と違反が多いことがわかります。

輸入食品は全量が検査を受けるわけではなく、輸入される件数の数十%のみを対象に行われます。中国の被検査率は高く、件数にして17%の輸入品が検査を受けています。一方、米国は9.8%の検査率です。これほど日本政府に目をつけられてボコボコに検査されているのにこの安全率を出している中国はよく頑張っているといってもいいのではないかと思わせる数値です。

自国の食料を自国でまかなえない日本にとって、食料の安定確保の視点からすでに中国はなくてはならないパートナーになっているのは否定できない事実です。最大の問題は輸入食品そのものにあるのではなく、予期できぬ食品テロであること、日本産だからと言って安全とは限らないことなどをよく認識して日本産を選ぶか中国産を選ぶかの選択をする必要がありそうです。

◆「求めているのは安心です」

できる限り具体的な数値を使って論理的に食品汚染について考えてきましたが、これを書いているわたし自身も気づいている重大な事実があります。それは、科学的に計算される安全性は統計の問題の答えを算出しただけで市民が安全と感じる基準とは依然乖離しているということです。

食品添加物について「ほら、計算したらこんなに安全でしょ?」と説明しても「使わなかったらもっと安全じゃない」ということになってしまいます。現実には保存剤のように使わなかったらかえって食品が雑菌などに汚染されるケースもあるのですが、添加物・食の安全・食品の品質確保を一元的に理解してもらうことは難しいのです。

BSE問題は科学と市民感情の狭間の問題としてよく挙げられます。日本では税金を使って牛の全頭検査をしています。BSE牛による危険からの安全が確保されているのは、検査をしているからではなく、危険部位を除去しているからです。それにもかかわらず日本で全頭検査を行うことにしたのは、科学と民意の狭間を理解した政府が1千億円をかけて国民の安心をサービスしたということになります。

『食品クライシス』(日系BP社編)では、国産牛を食べたことによって日本人何人が・・・という割合ではなく、具体的に何人の患者がブリオン病になるかを算出しています。数値の根拠は、イギリスおよびEUのBE感染牛高発生国におけるBSE感染牛の発生数と人間での発生の関係です。その結果は、日本における患者予測はなんと0.017~0.045人。つまり、予想される患者数は1人にも達しないということになります。

ここで再び科学と民意の壁が現れます。

科学ではこの数字はゼロとみて良い。つまり、日本の牛は安全であると考えます。ところが、民意は「ほら、感染者が出るじゃない」と考えます。

本書で何度も繰り返して書きましたが、日本は自国民の食料を全くまかなうことのできない国です。海外でどのようにして作られたかわからない食品が、食卓の6割を占めるのです。そんな状況に置かれていては、食の安全を脅かす可能性のある膨大な数の物質や事柄について、自分の知っていることはほんのわずか、気がつかなければそれで何事もなく過ぎていくことがほとんど・・・・・という感じになってしまうのはやむを得ないことでしょう。

ただ、「遺伝子組み換え作物はイヤだから食べないつもりでいたのに、組み換えを含まない食材ってとても高くなってしまった。これからは死ぬかもしれないけど遺伝子組み換え作物を食べていかなければ仕方がない」といった感じで食材を選ぶのは、あまりに不幸です。

食品テロといった特殊なケースを除けば、今の時代に著しく生命を脅かす物質が入った食品など売られていません。ちょっと理解する努力を払うことによって、たとえば遺伝子組み換え作物意味を知って、納得してそれを手にとることができれば、食が醸し出す心の豊かさは取り戻せるのではないかと思うのです。

restaurant著者

中西貴之 1965年、山口県下関市彦島生まれ。山口大学大学院応用微生物学修了。現在、総合化学メーカー宇部興産株式会社有機化学研究所で鋭意創薬研究中。研究テーマは低分子有機化合物と人間の身体の相互作用を解析することによって、少ない量で効果的に病気を治し、人間と仲良くなれる薬を作り出すこと。

・所属学会 日本質量分析学会 他 ・日本科学技術ジャーナリスト会議会員

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