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2009年2月18日 (水)

079『大統領の料理人』 ウォルター・シャイブ 初版2008年

厨房からのぞいたホワイトハウス11年

20090218

apple原題 "WHITE HOUSE CHIEF"

apple概要

ホワイトハウスの住人=大統領の素顔。クリントンとブッシュに仕えたシェフの回想録。ホワイトハウスで出された料理13品のレシピ付き。    

apple読むきっかけ&目的&感想

昨年(2008年)半ばに何かの書籍紹介でこの本を知り、面白そうだと思いつつも忘れていたんだけど、今年(2009年)に入ってこれまた何かの拍子に思い出し、読んでみたくなった。それでいつものごとく図書館で借りようと思ったけど、いつも行く市立図書館にも、めったに行かない県立図書館にも無かった。それで迷ったあげく、リクエスト(図書館で購入して貰う)する事にした。それが今年1月半ばだ。そして今現在2月18日、目出度く(?)本書があたしの手元にある。

様々なものが反映される「食生活」には、とても好奇心をそそられる。時代、文化、土地、宗教、主義、職業、収入、性別、年齢、そして「もてなしの心」「感謝の気持ち」など等、料理はあらゆる事の影響を受ける。それ故に、他人の食生活ほど面白いものは無いのではないか、と思う時がある。それがアメリカ大統領とファーストレディの食生活だったら尚更、ミーハーなあたしの好奇心はそそられる。(ちなみに本書は暴露本ではないので、スキャンダルは書かれていない。)

さくら好み ★★★★☆

当時ファーストレディだったヒラリー・クリントンに1994年に採用されてクリントン大統領のシェフになり、次期ブッシュ大統領の1期目も務め、2期目が 始まってすぐの2005年までの11年間に渡って、ホワイトハウスのエクゼクティブ・シェフとして「大統領の食事」を用意していたウォルター・シャイブ は、チャレンジ精神に溢れたプロ意識の高いシェフだ。大統領の家族用、公式行事用の食事を取り仕切る彼の目を通して描かれる情景には、色々な物事が透けて 見えてとても面白かった。

レストランシェフとホテルシェフが積み重ねる経験の違いや、それによって培われる能力には違いがあるんだという事が、ホテルシェフだった著者の言葉の端々 から感じられた。ホワイトハウスシェフは、大統領ファミリーの個人の嗜好にあった普段料理、数人分から3500人にも上る人数の料理、主賓(各国の皇室や 主席)をもてなす料理、慣れないホテルのキッチンやスタッフで大統領の訪問先でのレセプション用の料理、野外バーベキューやホリデーメニューもこなさなけ ればならない。それらを「組み立てる」には、美味しい料理が作れるだけでは務まらないんだね。 。。と言うものの、注文主(大統領ファミリー)によってホ ワイトハウスシェフに求められるものは大きく違ってくるので、現在のオバマ・ファミリーがホワイトハウスシェフに求めるものは、また違っているかもしれな い。

本書を読み、著者はファーストレディであったヒラリー・クリントンの料理人であった観が強く印象に残った。著者が切り取り描くヒラリー・クリントンの知的 で建設的でパワフルなパーソナリティーに、あたしはとっても好感を持った。そのため、オバマ新政権の国務長官として訪日していた彼女を今さっきテレビ ニュースで見た時、その颯爽とした笑顔に目が釘付けになった。

アメリカ料理に関しての記述でいえば、クリントン夫人が好んだサウスウエスタン料理、ブッシュ夫人が好んだテックス・メックス料理に惹かれた。というの も、あたしはチリコンカンとトルティーヤが大好きで、自分でもよく作るからだ。チリコンカンとトルティーヤのゴールデンコンビで食べるのはむろん、チリコ ンカンをナチョスにしたり、トルティーヤでケサディラを作ったりもする。だから、それらが登場するシーンでは口内に味が広がる気さえした。あと意外にも参 考になりそうだったのが、サラダのレシピだ。野菜の組み合わせ、ハーブ・スパイス・ビネガー・オイルの組み合わせは、あたしにとっては意外性があり、自分 でも作ってみたいと思った。

apple覚書

「あなたとそのご家族をレストランで満足させることができるシェフなら、わが国にはおそらく千人はいるでしょう。でも私が新聞で読んだかぎりでは、あなた はそのようなシェフをお探しなのではない。気に入ったシェフが見つかるまでは、ステートディナーは催さないとおっしゃった。そしてあなたが求めていらっ しゃるのは、十人を相手に料理の腕自慢をするのではなく、大人数の料理をさばくことができるシェフでしょう」

「ウォルター、ホワイトハウスの料理をどのようなものにしたいか、私にはアイデアがたくさんあるの。どれもアメリカ料理とワインの個性をハイライトにしたものなのよ」、と言ったヒラリー・クリントンがホワイトハウスシェフに求めた目標の大筋。

  1. 国のそれぞれの地方の料理と食材をうまく使うことが、「ナンバーワン」の優先事項。
  2. 誰の料理にも負けない味を保ち(どこのレストランの食事にも、という意味に私は理解した)、レストランレベルの食事を晩餐会などに出す。
  3. スタッフ用の食事も含めて、ホワイトハウスの食事全体を低脂肪で栄養価の高いものにする。また牛肉、豚肉など赤い肉類の使用は最低限とする。
  4. 家族用の食事は、一般家庭と同じように個々の嗜好を覚えること。栄養のバランスが取れた、カジュアルなスタイルにする。友人たちをもてなす場合、一工夫のあるカジュアルな料理にする。
  5. ホワイトハウスでのレセプションを、より国際色豊かでおもしろみのあるものにする。
  6. 屋上に菜園を作って、作った野菜やハーブ類を活用する。
  7. 購入する食材の質を向上させる。
  8. ホワイトハウスの歴史でシェフがどのような役割を果たすのか、考える。
  9. ゲストシェフの企画を考える。

鶏の胸肉グリルをのせたレモンパスタとブロッコリーImg_0001_3
ホワイトハウス屋上菜園サラダImg_0002
ステーキ・ファヒタスImg_0003
チェルシーのチョコレートチップクッキーImg_0004
ホワイトハウスのエッグノッグImg_0005
夏野菜のスロウImg_0011
アークティックチャーのグリルと野生キノコのリゾットImg_0012 Img_0012b
鶏肉とリンゴ、クルミ入りのサラダImg_0013
カレーチキンとバスマティライスImg_0014 Img_0014b
牛のフィレ肉 三角胡椒ソース添えImg_0015
グリーンピースとミントのスープImg_0016
ブッシュ大統領のBLTImg_0017
トウモロコシとサヤインゲンのサラダImg_0018

apple著者

ウォルター・シャイブ
1994年にヒラリー・クリントンに採用されホワイトハウスの総料理長となる。以来2005年まで、クリントン時代の7年間とブッシュ時代の4年間、アメ リカ大統領とその家族のために料理を作り続ける。ホワイトハウスに来る前は、ボカ・ラトン・リゾートクラブ、グリーンブライアー・リゾートなど有名リゾー トホテルの料理長であった。現在は「アメリカン・シェフ」という会社を経営、ケータリング・サービスや料理教室などを行っている。

田村 明子 
盛岡市生まれ。翻訳家、ライター。ニューヨーク在住。

(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)      

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