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2008年10月16日 (木)

056『ジャーナリズム崩壊』 上杉隆 初版2008年

「記者クラブに所属している日本の新聞やテレビを
報道機関というのはおかしい
あのような仕事は 政府の広報機関と同じ役割だ」

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pen概要

日本の新聞・テレビ記者たちが世界中で笑われている。その象徴が日本にしかない「記者クラブ」制度だ。メモを互いに見せ合い同じカンニング記事を書く「メモ合わせ」、担当政治家が出世すれば自分も出世すれば自分も出世する歪んだ構造、権力におもねり摑んだ事実を報道しない体質。もはや新聞・テレビは権力をチェックする立場と国民に知らせる義務を放棄したも同然である。恐いもの知らずのジャーナリストが、エリート意識にこりかたまった大マスコミの真実を明かす、亡国のメディア論。 

pen読むきっかけ&目的&感想

本書の存在は、「TBSラジオ ストリーム」(ポッドキャスト配信版)で、『ニュースさかさメガネ「ここがヘンだよ日本のジャーナリズム」特別対談~小西克哉VS上杉隆~』を聞いて知った。この対談で上杉氏の話がとても興味深かったので、本書を読んでみたいと思った。

メディア・リテラシーを身に付けるには、どうしたらいいのかな~?、なんて日頃ボンヤリと思っているあたしに、そのヒントを与えてくれたらいいなぁ、なんて思いながら読んだ。

さくら好み ★★★★☆

ほとんどが匿名記事、「一部週刊誌」「わかった」という書き方でネタ元を明記しない、反対意見を載せた紙面論議をしない、誤報を認めない、・・・・・そんな日本の新聞の姿に光が当てられている。今の報道の仕方だと、あたしがメディア・リテラシーを身に付けるのは、とても難しそうだ。けど、すごく必要だと改めて思った。来年からは、裁判員制度も始まるしね。 

主だった記事が署名されている、ネタ元の引用先(他社、他媒体)が明記されている、オプ=エド(反対論説)欄とコレクション(訂正・検証)欄が充実している、・・・・・そんな新聞があったら面白いだろうなぁ。そんな新聞を読んでいたら、あたしのメディア・リテラシーも向上しそうだなぁ。 。。。なんて、無いものねだりしてもしょうがないか。今はネットがあるだけマシだと思わなきゃね。それにそんな新聞ばかりになっちゃったら今度は、自分で解釈するからストレートニュースだけを報道してくれる新聞があったらなぁ、なんて思いそう。(笑)

何はともあれ、あたしの中でモヤモヤしているものが少し減って、メディアの輪郭の一部が見えたので面白かった。happy01

pen著者

上杉隆

1968年福岡県生まれ。NHK報道局勤務、
衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者を経て、
2002年よりフリーランスのジャーナリストとして活動。
著書『官邸崩壊』(新潮社)はベストセラーに。
NHK勤務に関し経歴詐称を取り沙汰されるが、
東京地裁が認定した二年超の勤務実態を根拠に反撃。
中傷にも屈しない打たれ強さに定評がある。
徹底した取材と精緻な分析で、
記事・作品を発表するたび永田町が震撼する気鋭のジャーナリスト。

* ジャーナリスト上杉隆のブログ 東京脱力新聞2.0
* DIAMOND online 週刊・上杉隆
* ニュースの深層 上杉隆の「読み・解く」

penポッドキャスト 

*注: 2009年3月いっぱいでTBSラジオストリームが終了したので、下記音声リンクは切れています。

TBSラジオ ストリーム ニュースさかさメガネ
「ここがヘンだよ日本のジャーナリズム」特別対談 ~小西克哉VS上杉隆~

今日からは、特別企画として、話題の新書「ジャーナリズム崩壊」の著者、上杉隆さんとの対談をお送りします。上杉さんは、NHKやニューヨークタイムスなどで記者を経験し、現在はフリーランスのジャーナリストとして活躍中で、昨年の安倍政権の辞任を事前に予測した著書、「官邸崩壊」も有名です。加えて、今回の本では、日本のマスコミの信じられないようなおかしなエピソードがたくさん出てきます。

2008/9/3(水) 
1日目【日本の放送局のとんでも話・NHK編】

 9分30秒

初日の今日は、上杉さんが取材を通じて経験したとんでもない、放送局の実態をお話しいただきました。

2008/9/4(木) 
2日目【日本の政治部記者の奇妙な常識について】

 9分34秒

2日目の今日は、日本の政治部記者だけが持っている、奇妙な慣習や、特性についてお話をうかがいました。特に本の中で、上杉さんが指摘しているのは「メモ合わせ」という日本の記者だけが行う奇妙な慣習です。海外メディアの記者からは「笑い物」になっているというこのメモ合わせとは一体何のでしょうか?

2008/9/5(金) 
3日目【日本ジャーナリズム崩壊の元凶~記者クラブの実態】

 10分15秒

今日は日本のジャーナリズムの談合体質の最大の元凶、記者クラブ制度の実態を伺いました。

2008/9/8(月) 
最終回【署名か匿名か~ジャーナリストの責任とTKD!】

 9分

最終回の今日は、日本の新聞記者に特有の匿名記事の問題と、ジャーナリストの責任の取り方、そしてTBSラジオの名物記者、武田一顕記者についても上杉さんの意見を伺いました。  

..... ..... ..... ..... ..... ..... .....
TBSラジオ ストリーム タチヨミスト★SHINGOさんの週刊誌チェック!

2008/9/12(金) 
『裁判員制度導入で最高裁は報道規制を企んでいる』

 5分48秒/7分49秒

「中央公論(2008年10月号 第百二十三年第十号)」 171P

pen覚書

・記者クラブ >記者クラブとは、首相官邸、省庁、地方自治体、地方公共団体、警察、業界団体などに設置された記者室を取材拠点にしている、特定の報道機関の記者が集まった取材組織の事。各団体から独占的に情報提供を受ける。記者室の空間及び運営費用は原則各団体が負担・提供し、記者クラブが排他的に運営を行う。英語では、該当組織が存在しない為 kisha clubと言う。日本の報道の閉鎖性の象徴として、内外から批判されている。 wiki

・日本のジャーナリズム精神 = 海外のワイヤーサービスメンタリティ >ワイヤーサービスとは、日本でいうと共同通信や時事通信のような通信社のことを指し、速報性をその最優先業務とするメディアのことだ。いわゆる海外でのジャーナリズムとそれとは一線を画す。単に、時事的な事象を報じるだけではなく、さらにもう一歩進んで解説や批評を加える活動を一般的にジャーナリズムと呼んでいる。

日本の 空想でしかない「客観報道」 >黒塗りのハイヤーに乗り、市井の目線から乖離していく日本の政治記者。政治家が出世したらその番記者も社内で出世するため、オブザーバーではなく政治に寄り添うプレーヤーになっていく。客観報道を装った偏向報道。電車やバスに乗り、一般人と同じ目線で動き、考え、取材する。ジャーナリストといえども、自らの立場を明確にする記者が多い海外。保守的かリベラルか、政府寄りか反権力か、いずれにしろ、その前提にあるのは、客観報道など不可能だという考え方だ。

日本の 同じ内容で安心するクラブ記者たち >事前に質問事項のすり合わせがある首相ぶらさがり取材。記者クラブの「メモ合わせ」。宮内庁の「申し合わせ」。自主規制、報道協定。

日本の 均一化された記者たち >「色のついていない」人間を採用する日本。同じような思考回路を持った偏った人間で組織が構成される。「色のついている」人間を採用する海外。多種多様な思考回路を持った人間で組織が構成される。

日本の 「新聞記者」で頂点を極めた次は「企業経営」に関わっていく制度 >経営の意向が編集現場に降りて来る日本。経営と編集が峻別されている海外。

日本の 検証できない記事 >日本の「一部週刊誌」「わかった」という新聞報道。「匿名記事」が多い日本。安全地帯から人を批判。海外は引用先のクレジット無しでは報道しない。「署名記事」が多い海外。実名を晒して論争。「オプ=エド(opposite-editorial)/反対論説」というページが新聞にはあり、連日、記者やジャーナリスト同士の批判合戦が繰り広げられている。

「誤報を飛ばしたら永遠に読者は逃げていく」のか? >ミスを認めない日本。ミスを許す海外。「訂正(correction)欄」を確立-、なぜ間違いを犯したのか、原因はどこにあったのか、その理由は避けられないものだったのか、そういう事を徹底的に検証した上で、ミスならば謝罪、別の理由ならば新事実を改めて掲載した上で訂正欄に記す。

・日本のキャスター ≠ 海外のキャスター

・「記者クラブの開放」と「クラブ記者の解放

・記者クラブの存在意義は何か? >隠蔽体質のある国家権力が情報を隠蔽できないようにするため、団体で交渉できるようにしたものが記者クラブ制度。個々では政治家から情報を取りにくいが、記者クラブがあると政治家から情報を取りやすくなる。

記者クラブの弊害は何か? >権力側に寄り添う大マスコミ(記者クラブ所属マスコミ)の意思によって、情報が隠蔽されてしまう。記者クラブで選別されるため個々様々な質問が出来ず、政治家から情報が取り難くなる。

なぜ記者クラブを雑誌・フリージャーナリスト・海外メディアに開放しないのか? >記者クラブを開放しない→自主規制、報道協定が出来る。→情報統制が出来る。→国家権力を、大マスコミ(記者クラブ所属マスコミ)でコントロールしやすい。マスコミの権力を、大マスコミで監視しやすい。ライバルに出し抜かれない。

・記者クラブを雑誌・フリージャーナリスト・海外メディア開放したら何が起こるのか? >記者クラブを開放したら→自主規制、報道協定が出来なくなる。→情報統制が出来なくなる。→個々の能力を発揮する事が重要になり競争が生れる。→国家権力を監視するジャーナリズム本来の力が発揮できる?  ・・・いやいや

Kevin_carter
1993年3月26日付のニューヨーク・タイムズに掲載。撮影:ケビン・カーター(南アフリカの報道写真家)。1994年ピューリッツァー賞を受賞した、ハゲワシが餓死寸前の少女を狙っている『ハゲワシと少女』という写真。

penインタビュー

上杉隆インタビュー『ジャーナリズム崩壊』はすでに始まっている

米国かぶれという批判を受けるとも思いましたが、別にNYT(ニューヨーク・タイムズ)の良さを書いたわけではなく、米国と比較することで、日本の記者クラブの悪いところをあぶり出したかったんです。朝日新聞は、いくら雑誌に批判されても、週刊誌ごときが何をほざくかという感じで見下しますが、朝日が崇めるNYTとの比較で言われると、彼らもジリジリするでしょうから(笑)。

米国の良い面はまず、記者が自分のスタイル、文体で書けるので、読者もファンになりやすい。また、長い記事が書ける自由さもある。米国の新聞記事は、日本の週刊誌の記事に近い。ストレートニュースは、ワイヤーサービス(通信社)の仕事です。

ただ、マイナス面もあります。各記者がバラバラに取材して書くので、日本のチーム取材と違って、情報量をクロスさせることができない。個人主義なので、同僚記者にも一切情報は渡さないという弊害があります。また記者の能力に依存してしまうので、ひどい記者の記事だと、事実誤認の多いとんでもないものも出かねない。そうした点では、日本の集団主義によるチーム取材の良さを感じますね。 ・・・全文を読む 

 

Japan's Most Exclusive Clubs   December 12, 2008

To be a reporter in Japan is to navigate the unique and often troubling system of Press Clubs - known there as Kisha Clubs. With thousands of them attached to everything from government agencies to corporations, many argue the Kisha Clubs foster a dangerously close bond between reporters and those they cover. OTM producer Mark Phillips reports from Tokyo. ・・・全文を読む

 

The_pen_is_mightier_than_the_sword The Pen is Mightier than the Sword

20081015

◆2017/10/08 追記


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