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2008年8月13日 (水)

046『星三百六十五夜』 野尻抱影 初版1955年

365日 夜空に思いを馳せて・・・

20080813

☆☆☆☆ 概要 ☆☆☆☆☆

365日のそれぞれの夜空を見上げ、星空の浪漫と魅力を1ページ毎に語っている。

*中央公論社から昭和三十年に出版された本書は、限定一五〇〇部で定価八〇〇圓。現在は、春夏秋冬に分けて文庫として出版されている。

☆☆☆☆ 読むきっかけ&目的&感想 ☆☆☆☆☆

名古屋市科学館で2ヶ月に1回くらいのペースで行われている65cm大望遠鏡で星を見る事が出来る市民観望会に、あたしは一昨年、昨年と参加した。以前、御岳のキャンプ場で見た降ってくるような星空にも感動したけど、望遠鏡を通して見る土星の輪っかにも同じくらい感動した。ウチからは光害と狭い空のため明るい星しか見えないけど、それでもあたしは夜空を見上げる事が大好きになった。それで、もう少し星について知りたいなぁ、なんて思って探して知った野尻抱影の本。

さくら好み ★★★★☆

小さな星座盤を回したり、その日の夜空を見上げたりしながら読んだ。

☆☆☆☆ 覚書 ☆☆☆☆☆

◆8月8日 立秋

八時ごろ涼みがてら、近くの野原を歩いた。さすがにここらは蟲の聲がしげく、露氣も感じられた。天頂に織女、下って牽牛。射手座がほぼ南中して、蠍座は赤いアンタレースを胸に、もう東南へ長く腹ばつてゐる。東の方を見ると、天馬ペガサスの大方形が全容を現したところで、そのずつと右下に赤ちやけた大きな星が一つ、光がまだ濛氣ににじんでゐる。

初めは惑星かと思つたが、念のため大方形の一邊をそつちへ延ばしてみて、それが南魚座のフォーマルハウトだと判った。南中するのは、十月も末で、こんなに早く見られようとは思はなかった。そして、その光に秋風がもう空を渡りはじめてゐるのを感じた。

天馬は秋の前觸れだが、この星は中秋を象徴する。そして、その季節にただ一つの淋しい一等星である。ずつと北寄りの英國では、南中でもこれを地平からわづか八度ほどのところにしか望み得ない。それで天文ファンたちに南への憧れを誘ふといふ。ちやうど今見るぐらゐの高さだらう―さう思つて、私はその方向を眞南と考えて、しばらく見入つてゐた。

◆8月15日 ソビエスキーの楯

縁ばたから星を眺める。西南の梅と柿の木の重なった葉ずれに青くきらめいてゐるのは、蠍の尾の二つ星である。そこへ落ちてゐる天の川は、木立で裾を切られてゐるが、射手座から遡つて行く景観は、いつもすばらしい。

その中でもすぐ目を捉へるのは、東南の中空で、天の川が一ところ際立って強く輝いてゐることで、そこだけ圓く持ち上がつて光の結節を造つてゐるやうに見える。ここが楯座で、詳しくは「ソビエスキーの楯」である。

一四五三年、トルコ人がコンスタンティノーブルを占領した。これは、三年後に出現したハレー彗星と結びついて、ヨーロッパの人心を動揺させたが、一六八二年に同じ彗星が出現すると、トルコ人は今度はウィンナに侵入して、全キリスト教徒は回教徒に征服される危難に面した。その時に、聖十字の紋章の楯と長剣を振りかざし、寡兵を率ゐて敵軍に馳せ向かひ、遂にそれを撃退したのがポーランド王ソビエスキーだつた。

楯座は、この王に對する感謝を記念するため、もと鷲座に属した天の川の最も美しい部分を割いて設けたもので、小さい十字形の星の群れが王の楯の紋章に象どつてある。

◆8月21日 グリンデルヴルト

ヘルマン・ヘッセ

早幾つかの山の夜が私の上に蒼く擴がつたが、

しかし今夜のやうな星を見たのは始めてだ。

山々は嶮岨な額をもつて聳えたち

かすかな輝きが、萬年雪の峯から峯へ通つてゐる。

その上に不思議な夢のやうに張り詰められてゐる

ま近な空―澄み切つて、星の明らかな。

力づよい星々の灯りが、無言に、ゆたかに、穏かに

淨福の圓舞のかたちにつらなつてゐる。

大きな平和が、星たちの花環を支配して目醒めてゐる。

そしてそれが涼しい光輝で、わたしの魂を充ち満たす。

そのために猶も先へと急いでゐる自分の生活の中で今は唯

昨日の姿だけが半ばは忘れられながら、私の心に浮んでゐる。

― 片山敏彦氏譯

☆☆☆☆ 著者 ☆☆☆☆☆

野尻 抱影(のじり ほうえい、1885年11月15日 - 1977年10月30日)は日本の英文学者、随筆家、天文民俗学者。また、古今東西の星座・星名を調べ上げたことから 「和製アレン」 とでも言うべき存在でもあった。とくに、星の和名の収集研究で知られる。日本各地の科学館やプラネタリウムで行われる、星座とその伝説の解説には、野尻の著作が引用されることが多い。弟は作家の大佛次郎である。野尻は大佛と同様に若くして文学に興味を持ち、若い頃は小泉八雲に傾倒した。星の和名の収集を始めたのは40歳を過ぎてからであった。

Sco

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コメント

感動 

山で見た 本当に 降ってくるような星

天体望遠鏡で

そう 土星の輪 
あっ! ほんとに有るんだ!!

それから

木星の 衛星  
あっ! 見える!!

そして

アンドロメダ星雲
あの ふんわりしたガス状の光源

感動 感動

投稿: nono1 | 2008年8月14日 (木) 20時44分

そう 感動!!

この星空を アメリカで仰ぎ見ていたかと思いを馳せ
この星空を 中国でも仰ぎ見るのかと感慨に耽り
この星空を スペインでも眺めているんだと浪漫に浸る

違う土地で 同じ星空を眺める事が出来る・・・
その当たり前な事にも感動してしまう

投稿: さくらスイッチ | 2008年8月15日 (金) 21時35分

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