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2008年8月 9日 (土)

045『ご冗談でしょう、ファインマンさん(上)』 R.P.ファインマン 第1版2000年

謎といえば是が非でも解かずにはいられない
人をあっと言わせるような茶目っ気
見せかけや偽善に対する憤慨
彼の先を越そうとする者をまんまと抜き返す才能 など
まさに 彼の面目躍如たるものがある

1965年ノーベル物理学賞を受賞したファインマンの回想録

20080801

***** 概要 *****

少年時代より変わらぬ、あくなき探求心といたずらっ気・・・。20世紀を代表する物理学者が、奇想天外な話題に満ちた自らの人生をユーモアたっぷりに語る。

*1986年に刊行されたものを2000年に文庫化。

***** 読むきっかけ&目的&感想 *****

アマゾンのノンフィクション・ランキングの上位に入っているのを今年の春に見て、概要や読者レビューを読んだら面白そうだったので興味を持ち、図書館に予約をしていた。それをやっと借りる事が出来た。待つこと3ヶ月半、長かった。

さくら好み ★★★★★

「“ファインマンと原爆と軍隊”の‘下から見たロスアラモス’」は、読んでいて複雑な思いがした。当事(1945年時に27歳)、マンハッタン計画(1942 - 45年)にも関わっていたんだねぇ。ファインマンは何度か来日している(1951年末、52 or 53年、1985年夏)が、日本を見て何を思ったのかなぁ。 。。ファインマンと同時にノーベル物理学賞を受賞した朝永振一郎も、開発に至らなかったけど、当事は理化学研究所仁科研究室の研究員として原爆開発に関わっていたんだよねぇ。 。。二人が原爆開発に関わっていた事実を、ノーベル賞を受賞した1965年に、お互いに認識していたのかな? していただろうな・・・。

それはさておき、一つ一つのお話が読み切りになっていて、数々のエピソードはいたずら心とユーモアに溢れていていた。ファインマンが、日常に向ける好奇心に溢れた眼差しに、とても惹きつけられた。だから、毎日少しずつ楽しんで読めた。で、もちろん、上巻の返却時に下巻を予約した。^^♪

***** 覚書 *****

◆こんな小さな子供が!?

略。そこで僕は「何でこんなことが起こるんだろう?」と考えはじめた。

ラジオの前を行ったり来たりしながら、こんな変てこなことが起こるには、真空管がめちゃくちゃな順序で熱してくることしか考えられない、アンプも熱くなって真空管もすっかり受信の用意ができているのに何も入ってこないのか、回路に電流が逆に流れているのか、とにかくラジオのつけはじめに(つまり高周波回路の部分で)チューナーがどうかしているのだ。だから何か入ってきて大きな音を出すんだろう。そのうちラジオ周波がちゃんと入りはじめて、グリッド電圧が調整されると普通に戻るのだろう。

こう考えていたら男がとうとうじれったがって、「お前いったい何やってんだ。ラジオ直しに来ておいて、ただ行ったり来たりしているだけじゃないか」と言いだした。

「今ちょっと考えているんだよ!」と返事しておいて僕は、「ようし。真空管を外して全部順序を逆にはめ直してみよう」と考えた。僕はそこで真空管の並びを変えてから、前にまわってラジオをつけてみると、さっきの雑音など嘘のように静かだ。そして熱してくるにしたがい、ちゃんと普通に鳴りはじめた。

こっちを疑っていた人というものは、こういうことに出くわすと、かえってその埋め合わせみたいに、よけいにこっちの肩を持つものだ。その男はその後もいろんな仕事をやらせてくれるようになったうえ、僕が世にも稀な天才だと吹聴しはじめた。「この子ときた日にゃ考えるだけでラジオを直しちまったんだからな!」と事あるごとに言って歩くようになってしまった。ラジオを修理するというのに、こんな小さな子供が、まずじっと考えてそれからどうすればよいかを思いついたということが、よっぽど意外だったのだろう。

◆自分の「知っていること」すら知らない

MIT時代、僕はいろいろないたずらをするのが好きだった。あるとき製図のクラスで、一人の学生が雲形定規を取り上げて、「この曲線に何か特別な公式でもあるかな?」と言った。僕はちょっと考えてから「むろんだよ。その曲線は特別な曲線なんだから。そらこの通り」と雲形定規をとりあげて、ゆっくり回しはじめた。「雲形定規って奴は、どういう風に回しても、各曲線の最低点では、接線が水平になるようにできているんだよ。」

こうなるとクラスの連中が一人残らず自分の定規をいろいろな角度に持ち、この一番低い点に鉛筆をあてて回しはじめた。そして確かに接線が水平だということにはじめて気がついたのである。みんなこの「発見」に沸き立ったが、誰もがとっくにかなり進んだところまで微積分をやっていて、「どんな曲線についても、極小点(最低点)での導関数(接線)はゼロ(つまり水平)である」ということは知りぬいているはずなのだ。ただそれを実際に当てはめてみることができなかっただけだ。言うなれば、自分の「知っている」ことすら知らなかったということになる。

これはいったいどうしたことなのだろう? 人は皆、物事を「本当に理解する」ことによって学ばず、たとえば丸暗記のようなほかの方法で学んでいるのだろうか? これでは知識など、すぐに吹っとんでしまうこわれ物みたいなものではないか。

◆考えるという機能がまったく停止してしまった

とにかく原爆実験のあと、ロスアラモスは沸きかえっていた。みんなパーティ、パーティで、あっちこっち駆けずりまわった。僕などはジープの端に座ってドラムをたたくという騒ぎだったが、ただ一人ボブ・ウィルソンだけが座ってふさぎこんでいたのを覚えている。

「何をふさいでいるんだい?」と僕がきくと、ボブは、
「僕らはとんでもないものを造っちまったんだ」と言った。
「だが君が始めたことだぜ。僕たちを引っぱりこんだのも君じゃないか。」

そのとき、僕をはじめみんなの心は、自分達が良い目的をもってこの仕事を始め、力を合わせて無我夢中で働いてきた、そしてそれがついに完成したのだ、という喜びでいっぱいだった。そしてその瞬間、考えることを忘れていたのだ。つまり考えるという機能がまったく停止してしまったのだ。ただ一人、ボブ・ウィルソンだけがこの瞬間にも、まだ考えることをやめなかったのである。

***** 著者 *****

Feynman リチャード・P・ファインマン(Richard Phillips Feynman, 1918年5月11日 - 1988年2月15日)は、アメリカ合衆国出身の物理学者である。経路積分や、素粒子の反応を図示化したファインマンダイアグラムの発案でも知られる。1965年、量子電磁力学の発展に大きく寄与したことにより、ジュリアン・S・シュウィンガー、朝永振一郎とともにノーベル物理学賞を共同授賞した。

カリフォルニア工科大学時代の講義内容をもとにした、物理学の教科書『ファインマン物理学』は世界中で高い評価を受けた。また、『ご冗談でしょう、ファインマンさん』などユーモラスな逸話集も好評を博している。生涯を通して彼は抜群の人気を誇っていた。

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コメント

うぉ。
スイッチさんがこのホンを選んだことに感激した。
。。それ以上に、このホンに3ヶ月も待ち行列があることに。。

>どんな曲線についても、極小点(最低点)での導関数(接線)はゼロ(つまり水平)である」ということは知りぬいているはずなのだ

ボクだって予言したんだよ。

>どんな曲線についても、極大点(最高点)での導関数(接線)はゼロ(つまり水平)である

Are you fyenman?
Yes i'm fine.

ファインマンは朝永を嫌いだった。

投稿: 古井戸 | 2008年8月 9日 (土) 02時34分

出版から結構な時間が過ぎているのに、この本はとても人気があるようです。もしかして、春頃にTVか雑誌で紹介されたのかもしれませんが。

>ボクだって予言したんだよ。

おぉ~、スゴイ!!

Feynman is Fine.  :)

投稿: さくらスイッチ | 2008年8月 9日 (土) 08時03分

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