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2008年5月13日 (火)

022『恋愛の誕生』 水野尚 初版2006年

人の心を一喜一憂させるこの感情こそが「恋愛」であるという見方は
十二世紀のフランスで発明された感受性だと考えられています

20080512

∵∵∵ 概要 ∵∵∵

「恋愛の誕生」とは、恋愛が肉体の次元から精神の次元に焦点を移したことを意味しています。それ以来、現在の二一世紀にいたるまで、世界中の恋愛観はずっとその影響下にあります。十二世紀のフランス文学から読み解く「恋愛の誕生」。。
 

∵∵∵ 読むきっかけ&目的&感想 ∵∵∵

あたしは「新しい概念を獲得した瞬間」の話が大好きだ。パラダイムシフトが起こり、それまでとは違った世界が現れる・・・って素敵。で、「恋愛」。たまたま図書館の英米文学の本棚を見ていて、タイトルに惹かれこの本を手に取った。ざっと内容を点検してみても面白そうだったので、借りてみることにした。

さくら好み ★★☆☆☆

恋愛観の歴史を知ることで、視野が開ける快感を期待したんだけど、そういった新鮮な感覚は得られなかった。

それに、過去フランスでああだったこうだったというのは面白かったけど、全体としてはイマイチ文章の構築に違和感があった。「二一世紀のわたしたちの恋愛観」と「過去のフランスの恋愛観」とを対比させて、似てるとか似てないとかやってるんだけど、「二一世紀のわたしたちの視点」が画一的すぎる気が・・・・・。しかたないのかな?

「恋愛について考えるときの基本的な構図を知るためには、最良の手引書となってくれるでしょう」とまえがきにあるけど、ここでいう「恋愛」はあたしが思う個人的な恋愛観じゃなくて、一般的認知に至った時代感覚のひとつとしての概念なんだよね。その区別を意識しないまま読んでしまったのが、そもそもの間違いだったんだろうな。あとがきにあったように「自分自身の恋愛観が見えて」くるのに役立てるのは、あたしには無理だけど、歴史を描いた映画(洋画)を見る時、時代の恋愛観を知っていることが、映画をより楽しむアドバンテージになるかも、と思った。^^♪
 

∵∵∵ 著者 ∵∵∵

水野尚

1955年生まれ。慶応義塾大学文学研究科博士課程単位認定退学。パリ第12大学(クレテイユ)文学博士(2002年)。神戸海星女子学院大学文学部講師、助教授を経て、2004年より同大学教授。
 

∵∵∵ 覚書 ∵∵∵

◆「弁証法の騎士」と呼ばれたアラベールの思想 

たとえば彼は『自分自身を知れ』という著書のなかで、罪に関 してそれまでとはまったく違う判断を下します。これまでの考え方では、ある人が罪を犯した場合、罪自体が問題とされ、罪を犯した場合、罪自体が問題とさ れ、罪を犯した人の意図は問われませんでした。ですから、中世の教会では、罪のリストが作成され、罪の免除のために支払うべき金額の一覧表が作られていま した。「改悛においてなによりも問題とされるのは犯した罪であり、それに科せられるべき懲罰である」(ジャック・ル・ゴフ『中世の知識人』)。それに対し てアラベールは、罪を犯した人の意図が重視されるべきだという考えを示しました。現実の行為ではなく、それをした人の心のなかが問題にされるのです。

◆結婚の発明、恋愛の誕生

結婚という社会制度は、恋愛よりも早く「発明」されている。結婚は子孫を残し家名や財産を引き継いでいくという社会的目的の上に成立し、恋愛は自由と人格の上に成立するものとして「発明」されている。で、当時の社会構造からいって、成立条件が違うこの二つは、別ものとして存在していた。つまり、「結婚と恋愛は別」という考え方だ。

それらが十二世紀の北フランス宮廷文化を引き合いに出して語られるんだけど、結構面白かった。「恋愛」の成立条件が、今で言う不倫だなんて、ね。 。。でもって、社会情勢の安定が農業や商業を発展させ、都市が生まれて都市文化が成立したおかげで、「恋愛」が誕生&普及したなんて、ね。生きるのに必死な時代には、「恋愛」が誕生&普及するのって難しいという事なんだ。。

これを知れば、「不倫は文化だ」という「???」な過去のマスコミ言葉も納得できる。(笑)

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