« 001『星の民俗学』 野尻抱影 新装第一版1978年 | トップページ | 003『天文学への招待』 岡村定矩・編集 初版2001年 »

2008年3月12日 (水)

002『月に響く笛 耐震偽装』 藤田東吾 初版2006年

“渦中の人”しか体験できない

ヒリヒリした痛み 底無しの恐怖 人の温か味

20080308a_2

次の国政選挙に出馬するという話しもある藤田東吾の本。そう、世間をあれだけ賑わした、所謂「耐震偽装」の渦中の人だったイーホームズの藤田東吾元イーホームズ社長の本なので、興味はズッとあった。「耐震偽装(wiki)」の報道は、あたしにはいつも良く理解できなかったから・・・。

< さくら好み ★★★☆☆ 

マンションに強度が不足している、それは構造設計段階で故意に行われた結果らしい、不正な構造設計を行ったのはデベロッパーから安く造りたいという要望が あったから、それを指導した経営コンサルタントがあるらしい、イーホームズは民間検査機関の中で唯一の独立系だったからスケープゴートにされた、県ごとに 検査が行われた、困惑&困窮する購入者、マンションの立替、・・・・・でも、全容がハッキリしないうちに、下請け構造設計士の単独犯みたいな事になり、国や建築業界全体の問題というよりは、特別な 事例なんだみたいな事に落ち着いてしまった感がある。姉歯建築設計事務所とヒューザーの後にも、田村落水設計とアパグループの物件も明るみになったけど、その報道からもその全容は良く分らなかった。

振り返っても、あれっていったいどんな事件だったのかあたしには良く理解できない。

この「耐震偽装」問題のあと、法改正が行われ検査期間が長くなった事は知っている。強度という目に見えないモノにお金を掛ける意義を、買う側が理解するよ うになった、とも思う。でも、「耐震偽装」の問題点が何だったのか、「耐震偽装」の犯人が誰だったのか、本当に全部が明るみに出たのか、TV、新聞、ネット、諸々のメディア情報を目にすればする程、あたしは???になっていった。

そんなあたしのモヤモヤを、ちょっとでも晴らしてくれるかもと期待して本書を手に取った。読み終えた今、そのモヤモヤは完全に晴れていないけど、でも思っ た以上に読み応えのある本だった。藤田東吾という人と、それを取り巻く人間関係、刻一刻と変化する状況に、ヒリヒリしながらページを繰った。

 
 
◆随所に賢人の印象的な言葉が使われていて心に響いた

・賢い旅人はどこへ行くか知っている。良い旅人はどこから来たか知っている。―林羅山

・「メロスはなぜ走りきれたのか? セリヌンティウスはなぜ友の身代わりになれたのか?」

・初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった。・・・・・

内容を読み、これらの言葉を作者がどう受け止めていたかが感じられ、これらの言葉がズシリと重くなった。
 
 
◆作者・藤田東吾が伝えたかったのは “隠蔽を行う人間の心象”

思うところ、感じるところ、考えさせられるところが、沢山あった。この本に登場する人物は、皆が‘普通の人’の様でいて、皆が‘特別な人’の様に感じた。
 
 
◆文芸春秋でなくimairu.comから出版に。意外な作者の経歴。

一旦は文芸春秋からの出版が決まっていたようだが、アパの事が引っかかって出版できなくなってしまったようだ。それであきらめる分けでなく、自身で立ち上げた会社からこの本を出版している。その後2007年に、改定完全版を講談社から出している。

本を読むと、藤田東吾という人の行動力、その人脈、固い信念が伺われて、起業家としての一個人の人間像が浮かび上がってくるのが面白かった。

 藤田東吾 wiki
 
 
 
 
Book_20080308_3

|

« 001『星の民俗学』 野尻抱影 新装第一版1978年 | トップページ | 003『天文学への招待』 岡村定矩・編集 初版2001年 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 001『星の民俗学』 野尻抱影 新装第一版1978年 | トップページ | 003『天文学への招待』 岡村定矩・編集 初版2001年 »